■INTERVIEW 当事者の思い
視覚障がい、精神障がいの当事者に聞きました。
▼障がいがある人もない人もお互いに気持ちよく過ごせたら良い 視覚障がい(網膜色素変性症)
▽暗くなると見えにくかったけれど、みんな同じだと思って気付かなかった
31歳ぐらいの時に難病の網膜色素変性症と診断されました。「遅かれ早かれ失明するかもしれない。治療方法はない」と言われたことが信じられず別の大学病院に行きました。だけど、そこでも同じことを言われ、「いつまで仕事をできるんだろう」と目の前が真っ暗になりました。
49歳で白内障の手術をした後、視野が極端に狭くなって危ないので仕事を辞めました。今の視力はほとんどゼロです。もしかしたらあそこに窓があるのかなと、ぼんやりと明るさを感じられる程度です。
▽「危ない」も「怖い」も日常にいっぱい
一番危なかったのは、駅のホームで点字ブロックの上で話している人をよけたら線路に落ちたことです。とっさに退避場所に隠れました。リュックがなければ骨折していたかもしれません。
広い歩道は〝空間〟を歩くような感覚で、白杖(はくじょう)を壁にぶつけないと真っすぐ歩けません。伸びている草が体に当たるとびっくりして車道にはみ出そうになりますし、スマホを見ながら歩いている人にぶつかることもあります。点字ブロックの上に自転車や荷物が置いてあることもよくあるから危ないです。
▽お互いに気持ちよく過ごせたらいい
最近は私のことを知らない人からも「お手伝いすることはありますか」と優しく声をかけてもらえるようになりました。本当にありがたいです。白杖の人が困っていることに気付いても、声をかけるまでには勇気がいると思います。声をかけてくれた人には「ありがとうございます」と気持ちを伝えて、自分でできることは自分でやって、できないことをお願いするようにしています。
▽運動好きが高じて金メダルを獲得
普段はランニングマシンで走ったり、アイマスクをしてボールの音を頼りに行うサウンドテーブルテニスを仲間とやったりしています。汗をかくとスポーツをしたなと実感します。昨年は、鹿児島県で行われた国体で金メダルを取れたのでうれしかったです。
▼うまくいくことを想像してほしい あきらめちゃいけないんだなと思う 精神障がい(統合失調症)
▽脳機能に振り回される人生
統合失調症だと分かったのは、高校2年生の時に自殺未遂をして精神科に入院させられた時です。突然発症したというより、数年前からどこかおかしかったのかもしれません。
統合失調症は脳の機能障がいです。私の症状は、幻聴や睡眠障がい、疲れやすさです。いろんな人の声でつらい言葉を浴びせられますし、40時間寝て40時間寝られないなんてこともあります。今までできていたことができなくなり、予定通りに行動することや、社会のリズムに合わせて行動することが難しいです。〝普通〟って言葉に苦しめられ、閉じこもった時期もありました。脳機能に振り回される人生です。
人と接する時は、集団から排除されないようにいつも気を遣っています。私には社会生活でのつらさを紛らわせるため、読書やゲーム、プラモデル作成などのひとり遊びの時間が必要です。何も考えない時間は日常から逃げられるのでほっとします。
▽「そうなんだ」とそのままを受け止めてほしい
障がい者は社会で不自由さを感じたり軽視されたりと、間違いなくつらい経験をしていると思います。私たちが配慮を求めた時は、否定や評価をしないで、ただただ「そうなんだ」と受け止めてほしいです。配慮を求めるのにも勇気がいります。受け止めた後にできるかできないかを伝えてほしいです。
▽生きようとしている限り、人とのつながりを保っていたい
社会に出るようになってから人の優しさに触れ、必要とされる喜びを知りました。一人が楽なことも分かっていますが、それ以上の喜びを知ってしまったらもう前の世界には戻れないですよ。だからずっと人とのつながりを持ち続けることを大事にしてきました。
精神障がい者になったら何もできないと思わないでください。私の場合は、工夫をしたり周囲の支えのおかげでいろんなことができるようになりました。あんなつらい人生になると思わなかったし、こんな幸せな日々がくるなんて思っていませんでした。私は今、満足しています。
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