「見えない障がい」と言われ、理解されにくい聴覚障がい。「聞こえ」を支える手段として手話や文字を使った要約筆記があります。手話や要約筆記の必要性を知り、聴覚障がい者が生きづらさを感じることのない社会について考えてみませんか。
■”聞こえない”にも人それぞれ
音が聞こえない、聞こえにくい状態を「聴覚障がい」といいます。障がいの程度は人それぞれで、全く聞こえない人や、大きな声で話せば聞こえる人もいます。生まれた時から聞こえない人と後天的に障がいを持った人では、手話への理解も異なります。
▽ろう者
先天的または言葉を覚える前に失聴した人。手話を第一言語としている人が多く、中には文章の読み書きが苦手な人も
▽中途失聴者
言葉を覚えた後に失聴した人。相手の口の形を読み取って音声での会話や、文章の読み書きをする人が多い
▽難聴者
聞こえにくいが聴力がある人。補聴器があれば聞こえる人、補聴器があってもほとんど聞こえない人など聴力に幅がある
■要約筆記とは
話の内容を要約しながら、その場で文字にして伝える筆記通訳です。手書きの他、パソコンでの要約筆記があります。主に中途失聴、難聴の人に対する支援方法です。
●[CHECK]通訳者に来てほしい
▽手話通訳者・要約筆記者の派遣
公的機関や医療機関、地域活動、就職活動、講習会などに行く場合に、手話通訳者や要約筆記者を無料で派遣しています。対象市内在住の聴覚障がい者など申込派遣日の7日前まで(土・日・祝日・年末年始を除く)
●[CHECK]手話・要約筆記を学びたい
▽手話奉仕員養成講座(入門・基礎コース)
聴覚障がいのことや聴覚障がい者の生活、関連する福祉制度などの知識とともに、手話で日常会話を行うために必要な語彙や
▽入門要約筆記講習会
2025年度の開催は秋ごろ、「広報ちがさき」でお知らせします。
■私が手話を始めたきっかけ 聞こえない人にも聞こえる人と同等の情報提供を
狩野(かのう)美幸さん
医療機関で看護師として勤務。手話通訳者の資格を取り、勤務がない時に活動。手話サークルでは手話学習支援も行う
▽手話を学んで見えてきたこと
8年前、たまたま市の広報紙で手話奉仕員養成講座の案内を見つけて興味を持ち、手話の勉強を始めました。学ぶうちに手話だけでなく、聴覚障がい者の歴史や、生活の困難さなどさまざまな問題があることを知りました。また、医療の現場でも聞こえない患者さんと聞こえる患者さんが、同等の情報を提供されることが大切だと感じました。
これらが、手話通訳者の資格を取得しようと思ったきっかけです。
▽社会にはさまざまな障壁がある
手話は聴覚障がい者にとって大切なコミュニケーション方法の一つで、言語です。手話が保障されることは聴覚障がい者が社会で自由に生きられることにつながります。手話を使う聴覚障がい者がいることを理解し、聞こえないことで生きづらさを感じることがないように社会全体で目指せたらと思います。
その一歩として、社会にはさまざまな障壁があることを知ってほしいです。耳が聞こえない人は外見だけでは分かりづらく、孤立してしまいがちです。
例えば、声が聞こえないので後ろから声をかけられても気付きません。聞こえる人同士の会話にも参加できません。銀行や病院で順番を待っている時に名前で呼ばれても聞こえないので分かりません。電車の遅延や通常とは違った事態が起きた時に、アナウンスだけでは分からず不安になってしまいます。災害時にも放送やラジオが聞こえず、災害に関する情報が不足し適切な行動をとることができません。
そういった社会からの孤立を防ぐためにも、まずは皆さんが少しでも聴覚障がいや手話に興味を持って、挨拶だけでも覚えてもらえたらうれしいです。そして、耳の聞こえない人と積極的にコミュニケーションをとってみてください。
問合せ:障がい福祉課
【電話】81-7159
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