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鎌倉の名宝112

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神奈川県鎌倉市 クリエイティブ・コモンズ

■五百羅漢図全50幅(円覚寺蔵)
偉大なる釈迦(しゃか)の死後、彼の説いた尊い教えを未来へつなぐため、仏弟子(ぶつでし)たちは修行の中に身を置いて、衆生(しゅじょう)の教化に努めました。涅槃(ねはん)の際、釈迦から仏法を永劫(えいごう)にわたり護持(ごじ)する使命を課せられたのが、羅漢(らかん)と呼ばれる存在です。
羅漢とは、供養を受けるに値する存在(応供(おうぐ))の意味を持ち、世間の執着から完全に離れて悟りに達した聖人です。彼らは弥勒(みろく)が来臨(らいりん)する56億7千年後まで仏法を護(まも)っているため、私たちと同じ娑婆(しゃば)世界に今もどこかで存在していることになるのです。そして9世紀の中国では、彼らは天台山の石橋(しゃっきょう)という浄(きよ)らかな地で理想的な出家生活を営んでいるという信仰が芽生え、そこは聖地となっていきました。
羅漢たちの生活は、出家者たちの目指すべき姿そのものであり、彼らを描いた作品は厳しい修行を実践する道場でお手本とされました。鎌倉地域に建立された禅宗寺院では、彼らを描いた絵画作品を僧院生活の理想像として特に珍重し、羅漢図を堂内に並べ、羅漢を召喚する儀礼を実践することが大変重要とされてきました。
円覚寺に伝わる本作は、一幅に10人の羅漢を描き、中国・元時代の制作とされる三十三幅、室町時代に補われた十六幅、江戸時代に補われた一幅の全五十幅からなり、鎌倉地域最大の規模を誇ります。神通力を発揮する姿や、喫茶や裁縫をする僧院生活の日常、また儀礼を執り行う姿など、豊かな画幅がそろいます。現在、順次修理を行っており、完了までにはまだ幾年かがかかりますが、現代の私たちもまた、修理という「教えをつなぐ」行いを通して、文化財を未来へつなぐ道を共に歩んでいます。
(重要文化財:50幅中の33幅《元時代》各幅約縦159・5センチ横90・5センチ)
鎌倉国宝館
(注)本作の一部は、7月2日まで鎌倉国宝館の特別展「仏画入門」で公開しています(詳細は9面)

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