
市内の文化財のうち、歴史的、芸術的に価値が特に高いものを「市指定文化財」に指定しています。このたび、新たに2件を指定しましたので紹介します(総数331件)。
■絵画 絹本著色(けんぽんちゃくしょく)
三千仏図(さんぜんぶつず)一幅(いっぷく)
所有者:浄光明寺
年代:室町時代(14~15世紀)
浄光明寺(扇ガ谷)に伝来する絵画で、毎年12月に行われる仏名会(ぶつみょうえ)という法要の本尊として、壁に掛けて用いられたと考えられます。
一般的に三千仏図は向かって右から、定印(じょういん)を結ぶ阿弥陀如来(にょらい)、施無畏(せむい)印・与願(よがん)印を結ぶ釈迦(しゃか)如来、施無畏印・触地(そくち)印を結ぶ弥勒(みろく)如来の三仏が描かれます。それぞれ過去、現在、未来を表し、その周りに整然と小さな仏が並びます。しかし、この三千仏図はいずれも定印を結ぶ形で描かれているのが特徴です。
全体に複数回にわたる後世の補筆、描き直しが確認できますが、三仏の台座は描かれた当初のままと判断できます。また、建長寺に伝来する国指定重要文化財の釈迦三尊像など、中国・南宋に由来する仏画に通じる趣(おもむき)もあります。
この作品は、南北朝時代から室町時代にかけての鎌倉地域における仏画の制作事情などを考える上で、重要な作例です。
■考古資料 若宮大路周辺遺跡群
出土の貿易陶磁器二十四点
所有者:鎌倉市
年代:鎌倉時代(13世紀)
この陶磁器は鎌倉駅の南東約300メートル、小町一丁目333番2における発掘調査で出土した、南宋時代の中国で作られた碗や皿です。
この調査地点では、鎌倉時代中頃から後半の竪穴建物が数多く発見されています。そのうち、13世紀後半に使われなくなったと考えられる竪穴建物の、倒壊した壁板の内側からまとまって、割れた状態で出土しました。
破片を接合しても、どこかしらが欠損していることや、通常、鎌倉の出土品に見られる細かな傷が表面になく、底面がざらざらとしていることから、鎌倉に運ばれる際に破損し、使用されないまま廃棄されたものと考えられます。
このように未使用の貿易陶磁器がまとまって出土し、しかも出土した遺構から当時の流通や廃棄の実態に迫ることのできる資料は全国的にも大変珍しいものです。また、遺跡の年代決定の指標となる点でも貴重といえます。
問合せ:文化財課
【電話】61-3857
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