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さかい風土記149 変化する地名の文字

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福井県坂井市

■変わっていない字から驚きの歴史も?
地名に使われている漢字が時代によって変わることがあります。これはかつて漢字の意味よりも音を重視していたためと思われます。読み方が同じであれば少しくらい違う漢字をあてても問題ないという、ある意味おおらかな感覚とも取れます。
例えば、坂井町大味は、明応(めいおう)八年(一四九九)の土地売買証文に「王見郷(おうみのごう)」と書かれ、慶長(けいちょう)三年(一五九八)の検地帳には「大見(おおみ)」「大味(おおみ)」の二つが見られます。もともとは河口荘十郷(かわぐちのしょうじゅうごう)のひとつ、王見郷に由来するとされます。大味には王屋敷という場所があり、ここはかつて継体天皇の屋敷があったことに由来するという伝承があります。「王(オウ)」が「大(オオ)」に変化して、「大味」になったと推測できます。
また、丸岡町には「猪爪(いのつめ)」という地名があります。由来を調べてみるとイノシシとは全く関係なく、天正(てんしょう)八年三月五日本願寺教如消息の宛名に『越前在々…井のつめ』とありました。これは、「井=湧き水や水場等」の近くという意味の「井のつめ」から変化したと思われます。
一方で、江戸時代から漢字が変わっていない地名に坂井町蛸(たこ)があります。先述の慶長三年の検地帳に「大見之内蛸(おおみのうちたこ)わた村分(むらぶん)」とあり、現在と同じ字が使われていたことがわかります。蛸はその字のとおり、8本足の生物のタコのことで、かつてこの地で蛸が取れたことに由来すると伝わっています。蛸は淡水はおろか、汽水域でも生息が難しく、坂井平野の内陸にあたる坂井町で蛸が取れることは考えられません。しかし、時代をもっとさかのぼると、縄文時代には海水面が上昇した時期がありました。この時に海水が入り込んだ広大な内湾があったとされ、蛸も採れたのかもしれません。もし、文字のない縄文時代の様子を地名が伝えているとすれば、驚きしかありません。

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