■いろいろなものとの位置関係がわかる地名
なぞなぞで「日本一高い駅はどこ?」というものがあります。答えは「東京駅」。これは、東京発の列車は「下り」、東京行きの列車は「上り」となっていることからきています。標高が高いわけではないのに「上る」「下る」と表現されている点がこのなぞなぞのポイントです。
地名にも、土地の高さ低さにかかわらず「上」「下」の文字が使われているものがあり、平野が広がる坂井市内にも見られます。上安田(かみやすだ)と下安田(しもやすだ)、上新庄(かみしんじょう)と下新庄(しもしんじょう)、上小森(かみこもり)と下小森(しもこもり)、上西(かみにし)と下西(しもにし)、江留上(えどめかみ)と江留下(えどめしも)といったように、「上」と「下」のセット、さらに「中」が加わる地名を市内各地で見つけることができます。
例えば、上新庄と下新庄、上兵庫(かみひょうご)と下兵庫(しもひょうご)は、近くを流れている河川や用水に沿って立地しており、上流側に上新庄、上兵庫、下流側に下新庄、下兵庫が立地することから、上と下は流れの上流・下流に由来すると考えられます。九頭竜川や十郷用水といった、流れる水に囲まれ、水の恵みに育まれてきた坂井市らしい地名と言えるのではないでしょうか。
丸岡町内では、谷町(たにまち)、富田町(とみたまち)、石城戸町(いしきどちょう)に「上」「中」「下」が北から南に向かって並んでいます。これは政治的な中心である丸岡城に近い側を「上」、遠い側を「下」としたと考えられます。町の中心である城の方を「上手」、遠い方を「下手」とした城下町らしい地名と言えるでしょう。地名の「上」「下」は首都や城のような政治経済の中心からの地理的な距離を意味することもあり、さまざまな要素との位置関係の中で地名がつけられたことがわかります。同じような文字に「前」と「後」があり、地名で「前」は京都に近い側を指します。福井北部の旧国名「越前」は「越国の京都に近い側」という意味で、福井から新潟までを指す「越国」の入り口だったことが地名からもうかがい知ることができます。
◇丸岡城下町の町名
石城戸町、富田町、谷町が丸岡城に近い側から上・中・下の順に並んでいます
◇日本海側の国名
越前は現在の福井県嶺北地方、越中は富山県、越後は新潟県に比定されます
◇河川や用水と集落の位置
上新庄と下新庄は十郷用水、上兵庫と下兵庫は兵庫川の上流・下流に位置しています
※詳細は本紙をご覧ください。
<この記事についてアンケートにご協力ください。>