■俺のまねしてくれたら 若い子には夢持ってほしい
「仕事も遊びも健康的に」そんな自分の背中を見せながら、犯罪や非行をした人を受け入れ見守るのが協力雇用主です。
坂井市協力雇用主会
会長 増田 敏夫(ますだ としお)さん
ころっと変わるのは、そりゃ無理だ。じわっと変えていかないと。長い目でみるってそうゆうこと
◇自分もやんちゃだった 今は受け入れ企業へ
「僕も若い頃はやんちゃやったでね。付き合い方はようわかる。気持ちもだいたいわかるな」と気さくに話す増田さんは、市内で協力雇用主の先駆けとなった人。20年ほど前、近所の保護司から就職先を探している子がいると相談されたことがきっかけでした。建築工事を営む増田さんは犯罪を犯した人を受け入れるうちに、就職先の選択肢を増やす必要性を感じ、知り合いの保護司に受け入れ企業を増やすことを提案。その結果、協力雇用主が市内に約20社集まりました。
◇道草食っても 遠回りしすぎるなよ
一度雇った若者から数カ月で辞めたいと相談された時、玄関を開けていたと増田さん。「隣の芝生は青いから、それを見てきたらいいと思って。でも、いつでも帰って来られるようにさ」。ここまでするのは、いろいろな人にお世話になってきたからだと増田さんは笑います。「数カ月後には戻って来てさ。人が変わったように働いて、今は独立したよ」。経験の必要性を認めつつも、若い人には夢を持って将来を見据えた生き方をしてほしいと話します。
◇独立した後も 行く末を見守り続ける
1年ほど現場で基礎を教えたら、資格を取るために学校に通わせるのも増田さん流。「会社としていいのもあるけど、一番は本人のため。学校で友達もできるし、資格取って仕事に前向きになってもらえれば」。まっとうに働くことの当たり前さを教え、できたときには褒める。特別な対応はせずにフレンドリーさを全面に出す増田さんの会社からは、独立する人もたくさんいるという。面倒見の良い増田さんは、独立した後も設備投資の負担を減らすため工場を貸すなどして行く末を見守る。今も増田さんの工場には、3人の親方たちが顔を出します。
◇地域に溶け込み つながりと輪を大事に
「誰の人生でもないんやでさ、面白く生きたものの勝ち」と何度も話す増田さんは、自衛隊やサラリーマンを経験し、会社も数回立ち上げたという異色の経歴の持ち主。今の会社を立ち上げるときは、「独立・安定・起業」と5年ごとの計画を作って自分に課す一面も。増田さんは地域に積極的に溶け込み、地区の連合区長やまちづくり協議会の会長も務めます。地域で職人が必要になったときは、会社の従業員を巻き込むことも。「変な目で見なければ、それでいい」。人のつながりと輪を大事にする増田さんは、地域に根付き架け橋となりながら、社会復帰する人を受け入れ、見守り続けます。
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