■ひとり親家庭に安らぎを 笑顔と感謝があふれる場所
NPO法人すばこSAKAI
◇支える側、支えられる側じゃなくて、ふらりと来れるような近所のおばちゃんみたいになれる場所
Well-beingの指標は
1自己実現
3自分らしくいられる
4安全で安心できる
5楽しくわくわくできる
5希望を持って暮らせる
7助け合える
8互いを尊重できる
◇「食べきれないお米を提供したいんです」
市の社会福祉協議会に相談したことが始まりでした。―すばこSAKAIの事務局長・中垣内秀信さんは振り返ります。一昨年の秋、同協議会を通じて山腰容子さん、岩間和代さんと知り合い、支援を模索する中、仕事や子育てを一人で担う親やその家族への食材の無料提供を思いつきました。しかも、食品ロスの削減やリユース(再使用)の促進など社会課題にも取り組むことができる―。
同じ価値観で意気投合した3人。ボランティアスタッフも増え、4カ月後には具体的な支援に乗り出していました。
◇同じ〝親〟ならではの気配りも
「おかえり。今日はサツマイモがあるで、食べてきねの」。
夕方から続々と訪れる親子を、スタッフが優しく出迎えます。
食材や日用品、学用品など、取り扱う品物はスタッフが集めます。毎回、その日に揃った食材に合わせたレシピを添付。見栄えの良くない野菜も食べやすいようにカットして袋詰めする気配りは、スタッフ自身も忙しく働く〝親〟を経験しているからこそです。
また、利用するお母さんから「必要とする誰かに使ってほしい」と、子どもが大きくなって着なくなった洋服を提供されることもあり、あたたかい気持ちが交差します。
◇お互いを受け入れていく
現在は30世帯のひとり親家庭が登録。安心と信頼が相まって、毎週継続的に顔を見せる親子が増えてきました。
「私たち自身も、毎週火曜日が楽しみなんです。手作りの小さなこの場所に、親子が毎週来てくれる。たくさんの人が笑顔を見せてくれるのが、何より幸せですね」と山腰さん。
すばこSAKAIの活動は、支援する側、支援される側という関係性ではなく、お互いを尊重し合える居場所として、ここに来る親子の日常に溶け込んでいます。
◇「誰にでも始められますよ」
「私、本当に普通の主婦なんですよ。でもこうして活動の場所を作ることができた。いろんな人が、自分にあった方法で活動の一歩を踏み出せるといいですね」と山腰さん。「自分たちがやりたくて始めたことを楽しみにしてくれる人がいる。私たちの方が元気をもらえています」とスタッフは顔をほころばせます。週1回の開催を無理なく続けるために、食堂形式ではなく食材を提供するスタイルに工夫もしました。
◇共感が広がる その先の幸せへ
活動への共感が広がるにつれ、スーパーなどから食品や日用品の寄付も増えてきました。品物が集まり過ぎたときなど、市内の子どもたちに広くお裾分けできるよう、6つの子ども食堂とのネットワークもできました。
「関わる人みんなが安心や幸せを感じられる、そんな居場所が一つでも増えてほしい」と山腰さん。笑顔あふれる活動はこれからも続いていきます。
◇NPO法人すばこSAKAI(令和5年4月発足)
ひとり親家庭を対象(要登録)に、フードロス削減を呼びかけ、丸岡地区コミュニティセンターの協力を得て集まった食品などを無料で提供している。活動は、毎週火曜日・磯部コミュニティセンター。
理事長:山腰容子(やまごしようこ)さん
副理事長:岩間和代(いわまかずよ)さん
事務局長:中垣内秀信(なかがいちひでのぶ)さん
◇子ども福祉課からひと言
カット野菜など工夫された食品の支援が経済的・時間的にゆとりのないひとり親に寄り添った支援となり、安心できる居場所になっていると思います。また、子どもの成長を支える助けとなり、同時に親が子どもの食べる姿をみることができる喜びにつながっていると感心しています。子どもに関するさまざまな相談に、連携して支援に取り組んでいきたいと思います。
◇環境推進課からひと言
昨今問題となっている食品ロスを減らそうと、フードドライブを実施しました。そのときの寄付先がすばこSAKAIでした。毎週、丸岡地区のコミュニティセンターを拠点にフードドライブを行い、支援を必要とする世帯に配布する取り組みは市民活動ならでは。活動を通じて市民の幸せが広がっていってほしいと思います。
※フードドライブとは、家庭で余っている食品を回収場所に持ちより、必要とする団体などに寄付する活動のこと
城のまち地区の空き家の活用も、すばこSAKAIの活動も、始まりは、まちを想う誰かの気づきやつぶやきでした。そのひと言が、誰かはもちろん、一歩を踏み出した自分自身の幸せにもつながっています。
そんな「小さな一歩」を応援する取り組みが、坂井市にはあります。
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