◆「ふくこむぎ」の開発・普及
福井県立大学生物資源学部の村井耕二教授(松岡芝原2)が品種開発した、福井県のブランド小麦「ふくこむぎ」の研究成果が、県版ミニノーベル賞と呼ばれる、福井県科学技術大賞を受賞。受賞を機に「ふくこむぎが注目され、さらに小麦で永平寺町を盛り上げたい」と目を輝かせながらインタビューに答えてくださいました。
Q:品種開発した、福井県のブランド小麦「ふくこむぎ」とは
A:小麦の品種改良を、永平寺町に来て25年以上ずっと続け、ようやく福井県の気候に適した特性を持つ品種「ふくこむぎ」ができた。
大麦も小麦も秋に種をまいて発芽し、葉っぱを茂らせる。そこで冬になる。福井県は雪があるので、まず、寒さに強くないといけない。冬を経て春になり茎が伸びて先端に穂が付いて種が実る。梅雨になり収穫時期に雨が続いて穂から発芽が始まってしまうと品質が悪くなるので、福井県では梅雨になる前に収穫しないといけない。つまり、「寒さに強く、早く収穫できる」という小麦が必要だった。これまでの常識では、寒さに強い小麦は収穫時期が遅くなると言われていたが、それを打ち破って「寒さに強く、早く収穫できる」のが「ふくこむぎ」だ。
Q:開発や普及にはどのような苦労がありましたか
A:開発には基礎研究から10年以上かかった。葉っぱを作る栄養成長から穂を作る生殖成長に移行するのに必要な遺伝子であるWAP1(ワップワン)を1998年に発見し、その遺伝子の知見を用いることによってこの「ふくこむぎ」が作られた。品種の確立は遺伝子の知識があったのでそんなに難しくはなかった。
でも、2012年の品種登録後、生産者が作ったものを加工して消費者に食べてもらうという「普及」が大変だった。永平寺町で最初に栽培が始まり、永平寺町のみなさまには随分お世話になった。永平寺町で栽培が始まらなかったら、今日のようには続かなかったと思う。
Q:今後やりたいことは
A:永平寺町で生まれた「ふくこむぎ」。県大永平寺町キャンパスで10年以上かけて生育・育種研究を進めた。現在、県内に小麦の製粉所がないので、できれば永平寺町に製粉所を作り、永平寺町で生まれた「ふくこむぎ」を地元で製粉できるようになればいいなと思う。
僕はあと1年で定年だが、研究は続いているので、自宅の横に小麦の研究所を作りたいと思っている。ハイブリッド小麦(雑種小麦)やふくこむぎの後継の品種改良、温暖化対応の小麦などの研究を続けたい。「日本ハイブリット研究所」という名前にして、永平寺町とタイアップして面白いことをしたいと思う。
Q:学生や若者へ向けたメッセージ
A:若い人には既定路線で決められたことをするのではなく、何か新しいことにチャレンジしてほしい。「ふくこむぎ」を開発したから、福井県で小麦を栽培できるようになった。小麦の産地ができた。こういった新しいことに挑戦してほしい。人がやらないような新しいこと。それを期待する。
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