今月のテーマ「振り返る」
■『ムッシュ・クラタ』
山崎豊子/著(新潮社)
大河小説で有名な著者による珠玉の短編小説。フランス文化に傾倒し「ムッシュ・クラタ」と呼ばれた先輩新聞記者。その葬儀参列を機に、クラタ氏を知る人たちに取材していく。すると、きざなだけだと思われていた彼がフィリピンの戦場で見せた気骨のある行動が明らかになり、戦後のフランスかぶれが全く違った姿に見えてくる。
■『ぼくが子どもだったころ』
エーリヒ・ケストナー/作
ホルスト・レムケ/絵
池田香代子/訳(岩波書店)
『ふたりのロッテ』『飛ぶ教室』などの児童文学で知られるドイツの作家ケストナーが、第一次世界大戦が始まる15歳までのこども時代の思い出を、ウィットに富んだ語り口でつづった自伝。ナチスドイツに屈することなく作家活動を続け、物語を通してこどもたちの喜びや悲しみに寄り添い続けた著者の原点を知ることができる。
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