お笑いコンビ「カリマンタン」ボケ担当 高橋むつをさん(37)
鯖江市柳町出身。コンビ名は好きな刑事ドラマに登場する架空の漫画のタイトルから。卓球も得意で、元プロ選手の水谷準さんと自身のYouTubeチャンネルで対戦している。
《笑い声、古里に響け》
「今日お集まりいただいた皆さんの中で、僕たちカリマンタンを知ってるよっていう方、もしくは知らないよっていう方は手を挙げてもらえますか?」
「それ、全員挙げちゃうでしょ」
舞台のそでから登場して一気に会場の空気をつかむと、持ち味のしゃべくり漫才が始まった。9月8日、神明公民館。敬老会のステージで自己紹介を交えたネタや、鯖江で眼鏡産業が有名になった理由をたどる作り話などを次々と繰り出すと、観客たちの笑い声が響いた。コンビ結成15年。地元出身という地の利も活かしながら、芸人としてのさらなる飛躍を目指す。
物心がついた時からお笑いが好きだった。好きなテレビ番組は録画もして繰り返し観た。中学2年の時は、生徒会のメンバーたちと全校生徒の前でコントも披露した。「全然ウケなかったですけどね。メンバー全員が大きな被り物をしながらしゃべっていたんで、観客に声が聞こえなかったんです」
高校卒業後、「手に職を」との思いで首都圏に出て板前修業に打ち込んだ。しかし、昔から好きだったお笑いが忘れられず、20歳で芸能事務所「吉本興業」のタレント養成所に入った。ほどなくして今の相方となる会田勇人(あいたはやと)さん(41)〔山形市出身〕と出会い、2009年にコンビを結成。会田さんはアルバイト先が一緒で、同じ養成所を卒業した先輩だ。お互い別のコンビを組んでいたが、同じタイミングでピンになっていた時だった。
折しも時代は空前のお笑いブーム。競争は激しく、月1回あるネタ見せライブでは多くの芸人が集まるため1組1分の持ち時間しかない。「これで果たして力がつくのか」。アルバイトで食いつなぎながら、もがく日々が続いた。
転機は2019年にやってきた。地域密着型の活動をする「福井県住みます芸人」になったのだ。家電量販店で漫才をしながら家電を紹介する営業や地域の行事に呼ばれるようになった。「やっと芸人をしている充実感を抱き始めた」
コロナ禍も明け、昨夏には初のライブを地元・鯖江で開いた。「『お母ちゃん』と慕う地元の方がチケットを売ってくださったりして本当に感謝です」。現在はシャボン玉パフォーマーとしても活動するなど、芸の幅を広げている。
それでも認知度はまだまだ、と自省する。「街中で見かけた時に声をかけてもらえるくらい、皆さんに知っていただきたいですね。今はアルバイトもしながらの生活なので、お笑い一本で食えるようにならないと。それが今の目標です」。不惑の節目を目の前に、芸人としての道に迷いはない。
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