■第352回 文化財編(29) 浄土世界を映す県内最大級の木造建築
数々の県指定・市指定の文化財を有する上野山(うわのさん)誠照寺は、親鸞聖人が教えを説いた上野別堂(車の道場)を前身に、室町時代に真照寺から改称して成った真宗誠照寺派の本山です。広い境内には今年度新たに県指定文化財となる御影堂(ごえいどう)(親鸞聖人を祀る)・阿弥陀堂(阿弥陀如来を祀る)を中心に、四足門・御経堂・鐘楼堂などが並びます。
さて、文久2年(1862)11月5日の夜、誠照寺は炎に包まれ、境内西方の御影堂・阿弥陀堂・対面所・書院・庫裏を失いました。明治初年には廃仏毀釈の嵐が吹き荒ぶ苦難の時代を迎えましたが、誠照寺では人々の篤い信心に支えられて仮御堂(みどう)が建立され、明治10年(1877)頃には県内最大級の規模を誇る御影堂が、同20年頃には阿弥陀堂が完成し、両御堂は浄土真宗本堂におけるもっとも整った平面構成を有して往事の隆盛を取り戻しました。
金箔と極彩色の装飾が施された御堂内には咲き誇る蓮華や躍動する龍が彫刻され、荘厳のなかに御宮殿厨子(ごくうでんずし)が安置される様は、まるで極楽浄土へと足を踏み入れたかのような美しさです。
(文化課 藤田彩)
◇誠照寺御影堂および阿弥陀堂 附 厨子2基
種別:県指定文化財(令和6年5月中旬予定)
所在地:本町3丁目本山誠照寺
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