■だてじゃない!ポイント(5) 記者の目
〔踏み出せば、そのひと足が道となる〕
~次なる一手で訴求力アップを~
眼鏡光学出版(東京)社長 美濃部隆(ゆたか)さん(67)
眼鏡光学出版は1958年創業。本社は東京都台東区。月3回発行の旬刊紙「眼鏡新聞」や「月刊眼鏡」などを出版。創業者で父の黎(あきら)さんの後を継いで1992年から社長。東京出身。
「めがねのまちさばえ」は県外の人たちにはどう映っているのでしょうか。眼鏡専門の雑誌・新聞を発行する「眼鏡光学出版」の美濃部隆さんに話を聞きました。
◇鯖江産の眼鏡の特長は
私がまず思うのは質感ですね。例えば同じ木綿でも、しっかり織り込んである木綿と安く作った木綿は違う。
質感が良いと堅牢で長持ちして、かけていて気持ち良い。適切な部品が適切な硬さ・柔らかさで使われていますし、すべてが考え込まれていて、細かく緻密に作られています。
ヨーロッパの展示会で取材したり、鯖江の工場にお邪魔するなかで強く感じますね。120年に及ぶ歴史の中で手伝え・口伝えで受け継がれてきた鯖江ならではの技であり、強味でしょう。
◇産地としての課題は
職人さんの高齢化や後継ぎ問題があると思います。その影響で、部品の加工や研磨などの工程に遅れが出てしまい、商品全体としての納期が長くなってしまっている現状がありますね。
鯖江の眼鏡づくりを支えてきた分業体制は素晴らしいと思うので、なんとか解決してほしいですね。
また、「めがねのまちさばえ」は全国的に浸透してきていると思いますが、もっとアピールをしていっても良いと思います。
◇鯖江の展望は
コストダウンが肝だと思います。眼鏡の工程は人手がかかりますが、機械化でなるべく人を省く。廉価な中国産と同じような価格帯にするのは無理ですが、価格競争はしなくても、コストダウンによって経費が浮けば待遇改善や人材確保、研究開発に投入できます。
一方で、多少高くても納得できるものであれば買おうという消費者マインドもあります。眼鏡は数年に1度しか買わないものですから、「それなら良いものを買おう」というムード作りが大切ですね。
また、昔は欧州のトレンドに合わせて眼鏡をデザインする傾向が多くあった気がしますが、最近は「鯖江のデザインは良い」という評価も出てきています。
良い品質、良い機能の上に良いデザインが載っている。そのあたりもPRしていけば鯖江の訴求力をさらに高められると思います。
■だてじゃない!ポイント(6) 経営戦略
〔ニッチな市場に勝機あり〕
ソウウェル(下野田町)社長 脇(わき)聡(さとし)さん(52)
市内事業者の販路拡大などを応援するために、市は「経営力向上補助金」を設けています。同補助金を今年度初めて活用する眼鏡デザイン事務所「ソウウェル」の脇聡さんに狙いなどを聞きました。
◇補助金の活用方法を教えてください
9月にパリで開かれる国際眼鏡展示会への出展を目指しています。
弊社は眼鏡の企画・デザインをして、それを協力工場に発注して作ってもらい、販売店に卸しています。
中国やシンガポールなど海外にも代理店や小売店がありますが、欧州圏への販路開拓を強化したいと思い、国際展示会への出展を決めました。世界2大展示会の一つとされる大規模な展示会に参加して、私たちのものづくりに共感してもらえるか挑戦したい。
◇ソウウェルさんの商品の特徴はなんですか
弊社はパーツ一つからすべてが鯖江産です。各工程にスペシャリストがいて、鯖江ならではの技術や知識が詰まっている。
また、お店にもお客さんの顔に合うように微調整をしたりするプロがいます。こうした一連の流れに携わっている人たちを大切にしたいとの思いを込めて、「TAYLOR WITH RESPECT」(仕立て屋に敬意)というブランドを展開しています。
◇今後の意気込みを教えてください
弊社は極小規模のマイクロ企業。大企業や海外資本と戦うのは無理なので、独自の感覚や販路でそのすき間を狙います。
幸い、インターネットの普及によって人々の価値観は多様化している。うちの魅力をしっかり発信してニッチな市場を捕まえ、継続させていく。それを徹底すればファンを増やしていけるはずです。
補助金に関する問合せ(対象は眼鏡事業に限りません):商工観光課
【電話】53-2229
<この記事についてアンケートにご協力ください。>