鉄道模型づくりに情熱を注ぐ 福井工業大3年 吉村瞬(しゅん)さん(21)
鯖江市制70周年を記念したジオラマ模型も制作している。将来は「鉄道関係ではなく実家の畳店を継ぎたい」。ご当地サイダー「ローヤルさわやか」やへしこなどが好物。
《ゴーイング、マイレール》
福井鉄道・西鯖江駅に併設されているギャラリーで、手作りの鉄道模型を展示している。工具は家業の畳店にあるものを使い、材料も畳を作る上で出る廃材などがメインだ。「大好きな福鉄を僕ができる方法で応援したい」。地元の鉄道を大切に思う気持ち。それが、模型作りへと駆り立てる「鉄分」だ。
鉄道は幼い頃から身近だった。自宅のすぐ隣を福井鉄道の線路が通り、電車が走るたびに音が聞こえ、揺れも感じた。家に遊びに来た友人が地震と勘違いしたこともある。「それを不便と感じたことはありません。むしろ、我が家でしか味わえない体験で、おもしろいと思っていました」
模型作りに目覚めたのは中学2年生の時。ものづくりのイベントで展示されていた車体が手作りと知ってからだ。「市販の鉄道玩具は持っていたが、一から作れることに衝撃を受けた」。帰るやいなや、見様見真似で模型を作ってみた。自宅は3代続く畳店。必要そうな道具や材料はあった。翌日、イベント会場にできたての模型を持っていき、職人に見せると、出来栄えをほめてくれた。「一気にのめり込んだ。その『師匠』との出会いが僕を変えた」
実はそれまで、中学校に行くのが苦手だった。生徒数の多い環境になんとなくなじめなかったからだ。しかし、模型作りが趣味になったことで、所属する美術部の活動でも模型づくりに没頭できた。「模型のお陰で学校が好きになったんです」
中3の夏には、担任が教室の黒板の右上に作った模型を置いてくれた。そして、クラス中に伝えた。「瞬が作った模型を毎日少しずつ動かす。模型が黒板の左上まで来た時がみんなの卒業だ」
高校を経て大学生の今も、「師匠」との交流を深めながら模型作りに励んでいる。その緻密さと技術の高さから噂は少しずつ広まり、福鉄関連のイベントに作品を出展するようになった。
西鯖江駅での展示は2023年、市内の福鉄6駅をアート作品で飾る「福井アートライン」に合わせて始めた。実行委員会から協力を呼びかけられたことがきっかけだ。展示品は、カットしたプラスチック板などで組み立てたオリジナルの車体。レールは家庭で使わなくなったものを知人から譲り受けた「リユースプラレール」である。イベント終了後も常設展示しており、駅と連携しながら吉村さんが管理している。展示品はバージョンアップさせており、プラレールの隣に、リモコンで走らせることができる本格的なジオラマを展示したこともある。「福鉄はいろんなタイプの車体が走っているのが魅力。鯖江を走る素敵な福鉄を子どもたちやいろんな人に知ってもらいたい。僕の模型がそのきっかけになればうれしい」。期待を込めて語るそのまなざしは、レールのようにまっすぐだ。
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