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自治体の皆さまへ

7月は同和問題啓発強調月間 尊敬し合える社会へ(1)

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福岡県久留米市 クリエイティブ・コモンズ

・久留米部落史研究会 会長 笠誠さん
元小学校の教員で、平成30(2018)年から小森野校区人権啓発推進協議会会長、令和元(2019)年から久留米部落史研究会会長を務める。
・水平社博物館 館長 駒井忠之さん
水平社博物館の学芸員として務め、平成27(2015)年から館長に就任。全国各地で講演会などを行い、人権問題の啓発を行っている。

今年、「全筑後水平社(※)」が創立100年を迎えます。人間の尊厳の実現のために活動する水平社博物館館長の駒井忠之さんと久留米部落史研究会会長の笠誠さんが今私たちにできることについて対談しました。(文中敬称略)

◇多くの協力で運動が広がる
駒井:全国水平社(※)は、大正11(1922)年に京都市で創立されました。全国水平社の理念、思想を集約している「全国水平社創立宣言」は、日本で初めての人権宣言といわれています。当時、全国からたくさんの人が全国水平社創立大会に集まり、各地にすごいスピードで運動が広がりました。多くの人が平等な社会を待ち望んでいたことがよく分かります。
笠:全国水平社創立の翌年に全筑後水平社が立ち上がって、今年で100年になります。創立には被差別部落の人だけでなく、農民組合の代表、げた屋さんなど多くの協力があり、「恵比須座(えびすざ)」という芝居小屋に500人ほど集まったそうです。みんなの力で差別をなくそうという機運がうかがえ、現在の人権のまちづくりにもつながっていると思います。
駒井:何度か久留米を訪問していますが、その度に久留米の人たちが熱い思いで人権の学びに取り組まれていると感じます。

◇自分事として考える
笠:市では小学校から人権について学び始めます。その中で、私は人権啓発推進協議会の取り組みを小学生に話させてもらっています。中には「自分でも何かできないか」と感想をもらうこともあります。学びをより深めるため、中学校でも校区ごとに学校と地域が連携し、工夫した啓発を進めています。例えば、「人権フェスタ」や人権講演会などの開催です。そこで得た知識や経験は、人権課題を自分事として考えるきっかけになります。学校と地域が一緒に啓発するのは、全国的にも類を見ない取り組みだと思います。
駒井:人権課題を自分事として考えることは大切なことです。水平社博物館をリニューアルした際も中学生に関心を持ってもらおうと、絵本や歌詞、漫画などから差別を考えられるよう展示を工夫しています。展示や講演会などを通じて水平社創立の思想を多くの人と共有したいですね。人権は先人が獲得してきて、私たちにつないでくれたもの。私たちにはそれを維持し、発展させていく責任と使命があります。博物館の活動が皆さんの学びの一歩になるとうれしいですね。

◇根底には人を尊敬すること
駒井:差別はその人の存在を否定し、傷付けること。否定された人は、自尊心や自己肯定感をへし曲げられます。水平社はそれを取り戻すことが大切だとうたっています。どのような存在であっても差別されず、あらゆる存在が肯定される社会を100年前から求めていたんです。創立宣言には、私が一番大切だと思う「吾等(われら)の中(うち)より人間を尊敬する事によって自ら解放せん」という言葉があります。「吾等」には「差別・被差別の関係を超えてみんなで」という意味が含まれています。みんなが互いに尊敬し合い、受け入れることができれば、自尊心や自己肯定感が高まり、差別を克服したあたたかな社会になっていくと思います。
笠:私は人との出会いや学びが未来を創っていくと信じています。皆さんがこれからも学び続けて、人権課題を共有してほしいです。そして、各校区が実施する「人権フェスタ」や人権講演会に参加し、一緒に啓発の取り組みができたら、人を尊敬し合える社会に自然となっていくのではないでしょうか。

(※)用語解説
▽全国水平社
被差別部落の解放を目指した最初の自主的な組織。創立を受けて全国各地に水平社が結成される。戦時下のさまざまな統制において消滅したが、差別解消を目指すさまざまな団体にその思想が引き継がれています。

▽全筑後水平社
大正12(1923)年12月23日に、久留米の「恵比須座」で結成。全筑後水平社結成後、筑後地区各地で水平社が結成されていきました。

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