1960年代から70年代の日本社会は、高度成長期の真っただ中にありました。時代は、安保闘争にはじまり、東京五輪、大阪万博、あさま山荘事件、沖縄返還など歴史的な出来事の中で悲観と楽観のはざまを揺れ続けていました。
めくるめく時代の中、五木寛之は1966年(昭和41)に『さらばモスクワ愚連隊』で作家デビューします。『GIブルース』や『艶歌』、さらには『蒼ざめた馬を見よ』『青年は荒野をめざす』へと続きます。これらの作品は版を重ねながら、若い世代を中心に読み継がれてきました。
本展では、五木の1970年代に焦点をあてます。サブカルチャーの喚起が求められた時代の中で、五木文学はどのような軌跡を辿ったのでしょうか。今回は、1975年(昭和50)に執筆した長編小説『戒厳令の夜』を取り上げ、本作の魅力に迫ります。
■フォトクロニクルコーナー
五木の幼少期から1970年代までの写真を紹介します。
■五木寛之の軌跡 1970年代
当時のマスコミ・ジャーナリズムに大きな波紋を起こした「休筆宣言」(1971年11月)。さらには、休筆期間中ながらもサブカルチャー・マガジン『面白半分』で編集長を務めた1973年。つねに時代の先端を見すえたエンターテイメントをさわやかに歌いあげてきた五木の仕事をふり返ります。
■『戒厳令の夜』1975年執筆再開
「その年、四人のパブロが死んだ」小説『戒厳令の夜』の冒頭のフレーズです。物語は、スペイン内戦を軸に1930年代と70年代を重ね合わせ、ナチス占領下のパリから幻の美術品をめぐって展開していきます。本展では、本作執筆の際に参考にした書籍や映画の台本、ポスターなどを展観します。また、執筆を終えての五木のインタビュー記事などを併せて紹介します。本作発表から約50年経過した現在も色あせない五木文学の創造の機微に触れていただければ幸いです。
■そして、今五木寛之
91歳を迎えた現在も精力的に執筆が続いています。2022年~23年に発行された新刊約20冊を紹介します。
期日:2月3日(土)~3月10日(日)
会場:八女市田崎廣助美術館 八女市立花町原島108-1
開館時間:9:00-17:00(入館は、16:30まで)
休館日:月曜日(祝日の場合は翌日)
入館料:一般200円(150円) ※()内は15人以上の団体割引料金 ※高校生以下、身体障害者手帳、精神障害者保健福祉手帳または療育手帳の交付を受けている人と、その介助者は無料。
■五木寛之(1932年ー)
福岡県八女郡辺春村(現八女市立花町下辺春)生まれ。生後まもなく朝鮮半島に渡り、1947年に引き揚げ、八女中学へ転入、のちに光友中学校へ転校する。49年福岡県立福島高校入学。52年早稲田大学露文科入学。66年に『さらばモスクワ愚連隊』で第6回小説現代新人賞、67年『蒼ざめた馬を見よ』で第56回直木賞、76年『青春の門筑豊篇』ほかで第10回吉川英治文学賞のほか受賞歴多数。代表作に『風に吹かれて』『戒厳令の夜』『大河の一滴』などがある。2022年より日本藝術院会員。
※本展に関する情報に変更がありました場合は、当館ホームページによりお知らせいたします。
問合せ:八女市田崎廣助美術館
【電話】24・8304
<この記事についてアンケートにご協力ください。>