◆疾風(しっぷう)に勁草(けいそう)を知る
草野 可凜(かりん)さん(ラグビー選手)
草野さんは海外でも活躍したラガールだ。157センチ59キロ。けっして恵まれた体格ではない。海外の大きな選手たちと比べるとかなり小柄だ。でも侮るなかれ、その体には底知れぬエネルギーが詰まっている。
福工大城東高校でラグビーを始め、男子に交じって激しい練習をしてきた。ただただ何とか付いていこうと必死だった毎日。3年時、女子として初めてラグビー部員として正式に認められたのがうれしかった。その後福岡大学のラグビー部へ。男子の大会には出場できないため、平日はラグビー部で鍛え、週末は女子クラブチームで大会に出る。彼女たちの世代は、ぶつかっては超えぶつかっては超え。女の子が、大好きなラグビーのやれる環境を自らの手で作ってきた歴史がある。
彼女はラグビーの本場ニュージーランドとオーストラリアへ、ワーキングホリデーのビザで単身乗り込んだ。海外へ渡る選手の多くは後ろ盾や保証が付いている。が、彼女が欲しいのは、お仕着せの環境ではなく、自分で切り拓き、自分自身が手ごたえを感じた経験なのだ。「現地の人たちと触れ合い、自分で暮らしを立てる生活者であるべき」という彼女なりの基準があったからこそアルバイトをしながら実力でチームを決めた。
チームメルボルンユニバーシティは過去成績が振るわなかったにもかかわらず、彼女が加わり戦ったオーストラリア最大の大会で、初めて総合2位となった。活躍した彼女はベストバックス賞を受賞。チームで一番小柄な彼女は確信した「サイズじゃないことが証明できた!」
さらにレベルズ女子のメンバーとして15人制のスーパーW(ダブリュー)(女子版スーパーラグビー)にも出場。チーム初めての日本人が自分だったことを誇りに、大舞台での経験は自信となった。「スポンサーのいない個人選手でも海外でやれるという成功例を残せれば、次の世代の勇気になるのでは」と女子ラグビー界の未来へ思いを馳せる。
彼女の話には〝次の世代〟という言葉が度々登場する。少しずつベテランの域に入り、目下の課題は〝次の世代に何を残せるか〟だ。期間限定のスポーツだからこそ、その経験をどう自分の人生に活かしていくか、自分が納得した人生を送れるかが大事だ、と言う。
「将来的にはコーチの道へ進みたい。だから広い視野を持ちつつラグビーすることを心がけています。何よりラグビーが大好き。だからまだまだ勉強もしたいし、ずっと関わっていきたいですね。」
28歳、女子ラグビー界の異端的先駆者はまだまだスピードを緩めない。
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昨年10月に鹿児島県で開催された特別国民体育大会ラグビーフットボール女子の部(7人制)に福岡県チームとして出場し、準優勝。ナナイロプリズム福岡 所属決定
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