認知症になっても希望を持って暮らすことができるよう、認知症の人を含めた国民一人一人がその個性と能力を十分に発揮し、お互いを尊重しつつ支え合いながら共生する活力ある社会の実現を推進することを目的とし、「共生社会の実現を推進するための認知症基本法」が2024年1月1日に施行されました。
市では、認知症の人やご家族から相談を受けたり、地域で一緒に活動をしています。認知症地域支援推進員が活動する中で、80代の認知症のお母さんと暮らしている3世代同居のご家族に出会いました。今回、お話をしてくださったのは、60歳の息子さんです。
●なんとなく気づき始めたのは…
5年くらい前からちょっとしたことでブツブツ言い出し怒ったり…携帯電話をゴミ箱に捨てたり、親戚の集まりの後は寂しいのか、私たち家族に、当たり怒っていました。もともと母は男勝りな性格で気が強く、仕事もバリバリしていました。家族に対して怒ったり、特に私の妻に対して厳しかったので、母の顔色を伺って生活をしていました。子ども達も「今日はばあちゃん機嫌がいいね」「今日はあんまりよくないね」と言っていましたね。本人が頼んだものを用意すると、「頼んでいない」と言うなど、気になるところはありましたが、それも性格なのかなと思い、認知症なのか分からないまま過ごしていました。
今考えるとその時から少しずつおかしかったのかなと思っています。
●地域包括支援センターの紹介がきっかけ
もの忘れに気づいたのは一昨年くらいからです。でも、知り合いと比べて「うちはまだ軽い方だな」と思い、すぐに相談とは思わなかったです。怒ったり、泣いたりし始めて、一番ひどかったのは去年です。父に対しては、泣いて昔の事を繰り返し話すことが多くなり、夜通し話をするときがあって、父はずっと母の話を聞いていて寝れずにいました。家族が我慢して、ストレスを感じることも多く、妻はちょっとした物音に敏感になっていて、夜中あまり眠れない時もありました。そういうこともあり「もう無理ばい」と思いました。母は精神的におかしくなっているんじゃないか、相談しようと思いました。かかりつけの先生にも話して、もの忘れ外来への紹介状も書いてもらってはいたんですが、もともと母は病院嫌いで、病院には「行かん」って言うから、そのままになっていました。
そんな時、市報で「なんか見たなー」と覚えていて、はじめは市役所に認知症の相談窓口を聞こうと思い電話をし、地域包括支援センターを紹介されました。
●認知症初期集中支援チーム(オレンジチーム)の関わり
地域包括支援センターに相談して、まずは認知症かどうか専門医への受診をしてみることとなりました。認知症初期集中支援チーム(※1)の支援を受け、病院での検査や、そのあとメンタルクリニックへの受診の段取りをしてもらって、スムーズに受診できたことが良かったです。受診の結果、母は認知症と診断されました。初めてオレンジチームのスタッフが自宅へ来た時、母は初め警戒して、機嫌も悪く、「なんか悪巧みでもしてるんじゃないか」と感じたと思います。でも話して行くうちに表情も変わり、そのうち笑顔で話すようになっていました。また、家族に対して「一人で悩まなくていいですよ」と言われた言葉がすごく良かったです。身内に何でも話せるわけではないから、話を聞いてくれる人が来てくれて本当によかったと妻が話していました。
●通いのサービスを利用
母は老人会の集まりにも参加していなかったので、通いの場などに、「誘われてもどこにも行かんだろうな」と最初は思っていました。地域包括支援センターの職員さんと医師会の認知症地域支援推進員さんが認知症カフェへの参加を提案され、母と一緒に参加してくれて、人の集まるところにも行けるようになりました。認知症カフェは2時間程度の参加で、徐々に慣れていっているなと思いました。
その後、積み木の会や手芸の会(※2)へ参加して、推進員さんが生活支援バスで帰る練習を一緒にしてもらったことも信頼に繋がってよかったと思っています。家族としても通いの場まで送迎したり、行く前の準備を協力しました。洋服を選ぶのに時間がかかったり、自宅を出る時間を伝えても忘れているので、何回も声かけしたり大変でしたが、母の気持ちを大事にしながら無理強いはせずに見守りました。今はデイサービスの利用をしています。最初は、「何しに行かやんと」とブツブツ言っていたけど、行くと楽しいみたいで、帰って来るときにはニコニコして帰ってきます。自分達も父も、母と離れる時間が必要だと思います。離れる時間があると母に優しくなれますね。
●同じように悩んでいる人へ
地域包括支援センターやオレンジチームのような専門職による支援を早めに利用した方が良いと思います。最初は、母が支援スタッフを受け入れるだろうか、スムーズにいくだろうかと心配していましたが、支援スタッフの方達が、母の話をしっかり聞いてくれて、親近感のある話題も交えながら話してもらえ、母も会話が弾んだりして良かったです。話を聞いてもらうだけでも気持ちが楽になりますよ。
●終わりに(息子さんと推進員より)
この辺は、地域の集まりや隣組の付き合いもまだある方です。やっぱり誰かと会って話した方が刺激にもなっていいですね。知らない情報も入るし、元気になります。家族だけではなくて、人との付き合いが大事だと思います。母が積み木の寄贈で幼稚園児と一緒に遊んだように、子ども達と接することもいいですね。これからの大川市、地域で誰かとつながるきっかけがたくさんできたらいいですね。
※1 認知症初期集中支援チームは、大川三潴医師会に設置し、認知症に関する心配、在宅生活に困っている方などを対象に看護師や作業療法士らの専門職がチームとなって、専門医への受診支援やサービス利用等につなぐサポートを行っています。
※2 積み木の会や手芸の会は、高齢者や認知症サポーターが、端材を磨いて積み木を作ったり、ガーゼマスクを布巾にリメイクしたりして、市内の保育園等へ寄贈する活動を行っています。
■認知症月間の取組
・市役所1階 ロビーパネル展示
9月2日(月)〜17日(火)
・ゆめタウン1階 エスカレーター下パネル展示
9月18日(水)〜29日(日)
・昇開橋オレンジライトアップ
9月13日(金)〜24日(火)
■認知症ケアパス
認知症の予防段階から、症状の進行に合わせて、いつ・どこで・どのような医療や介護のサービスがあるのか、情報を知り、将来の計画に役立てていただくものです。市役所1階健康課窓口で配布しています。令和6年8月に改訂しました。
■認知症に関する相談窓口
・地域包括支援センター(詳しくは大川市介護保険高齢者福祉ガイドブック、市ホームページをご覧ください)
・大川三潴医師会 【電話】0944-87-2611
・健康課健康推進係 【電話】0944-86-8450
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