本の紹介を通して、皆さんも特別な一冊を見つけてみませんか。
■大野城心のふるさと館 赤司善彦館長
◇北海道犬旅サバイバル
服部文祥/著(みすず書房)
仕事柄、歴史関係の専門書を読むことが多いのですが、発想を豊かにするようジャンルを問わず読書します。
最近、知人に勧められて読んだ本です。登山家が愛犬とともに北海道の宗谷岬から襟裳岬までの分水嶺700キロを積雪期に辿るドキュメントです。財布もカードもスマホすら持たず、鹿を撃って食いつないでの単独行です。壮絶なサバイバルと思いきや、旅の最後に出会ったおじさんによって、自給自足を課した旅はチャブ台返しされるのです。通じ合えると信じた愛犬とのユーモラスな駆け引きも、過酷な旅を軽やかにしています。
日本でこんな旅ができることに驚きです。読書は他人の体験を追体験できます。
◇エリカ 奇跡のいのち
ルース・バンダー・ジー/著 柳田邦男/訳(講談社)
アメリカの中学教師がドイツ旅行中に出会ったエリカという女性の話を聞き、その奇跡の運命を絵本に構成したものです。
第二次世界大戦末期にナチス・ドイツはユダヤ人を家畜のように貨車に押し込め、ガス室のある強制収容所へ送りました。貨車がある村の踏切で徐行した時、若い母親が毛布にくるんだ生後2カ月の赤ん坊を貨車の換気窓から外へと放り投げたのです。その様子を見ていた村の女性は、柔らかい草むらに落ちた赤ん坊を拾い上げ、その子をエリカと名づけ密かに育て上げたのです。
母は「死に向かいながらわたしを生に向って投げたのです」と、エリカは著者に語ります。人生はどう生きるかが大事だと言いますが、一秒でも長く笑って生き抜くことこそ大切だと思うようになりました。
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