■水城跡第62次調査 水城跡東土塁(どるい)の積土(つみど)
水城跡第62次調査は、平成28年度に実施した特別史跡水城跡の東門周辺での確認調査です。調査区を3カ所設置して調査を行い、その内の一つの調査区で昭和初期に確認された木樋(もくひ)が80年以上の時を経て再確認され注目されました。
この木樋は太宰府の文化財384号(平成29年5月号)で紹介しましたが、今回は他の調査区で確認した水城跡の土塁の積土を紹介します。
水城跡は、上下の2段に分かれ、上側を上成(じょうせい)土塁、下側を下成(かせい)土塁と呼びますが、この調査では、上成土塁の裾部(すそぶ)と考えられる積土などを確認しています。
62次調査で確認した積土は、上成土塁では厚さ数cmと細かく積まれ、下成土塁では10cm~30cm程度とやや厚い積土でした。積土には、粘性の強い土と砂が多く混ざった土を使い、交互に重ねるように積んでいますが、上成土塁に比べ下成土塁では全体的に砂が多く混ざった土が使われています。
上成土塁に近接した箇所で確認した粘質土の積土は、緩やかに上成土塁に向かい立ち上がっており、上成土塁の裾部と考えられる他、積土の傾斜から上成土塁の築造時の傾斜を想定することができました(本紙またはPDF版掲載の写真1)。
また、上成土塁の下層で確認した積土は、上成土塁同様に厚さ数cmと細かく積まれている以外に、横幅も数十cm程度と小規模な幅で細かく積まれ、上成土塁の下をしっかりと支えるように積まれています(本紙またはPDF版掲載の写真2)。この土のう袋を積んだような積み方は、古墳を造る時に用いられた技術とよく似ていて、古墳築造の知識や技術を持った人など、土の取い扱いに慣れた人が水城の築造に関わっていたと考えられます。
この調査では、当時の土木技術の高さを再確認するとともに、上成土塁の裾と考えられる積土など、今後の水城跡の保存整備に必要な情報を得ることができました。
文化財課 沖田 正大(おきた まさひろ)
■筑紫地区5市合同の文化財写真展を開催します
今回は「ちくしまいり~江戸時代のくらしと信仰~」と題し、筑紫地区の近世の史跡や文化財を写真パネルで紹介します。
期間:12月12日(火)~22日(金) ※平日のみ
会場:太宰府市役所1階市民ギャラリー
問合せ:文化財課調査係
【電話】内線470
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