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太宰府の文化財(458)

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福岡県太宰府市

■遺跡から出土した文字資料 ―水城小学校校舎の建替えに伴う発掘調査― 大宰府条坊跡第346次調査
令和4年の10月から12月にかけて、水城小学校の校舎改築に伴い発掘調査を行い、奈良時代から平安時代の大型建物が見つかったことは、以前お伝えしました(太宰府の文化財455号)。今回紹介するのは、この時に出土した市内では3例目となる「漆紙文書(うるしがみもんじょ)」といわれる文字資料についてです。
漆紙とは、漆を入れる容器の蓋紙として漆が乾燥しないように使用されたものが、漆を吸い込み固まったことで地面の中でも腐食(ふしょく)せずに残ったものです。漆紙として利用される紙は、当時貴重なもので、必要なくなった紙を再利用されることが多くありました。漆紙の中でも、文書を再利用し文字の残る漆紙を「漆紙文書」と言います。漆紙文書として見つかる文字資料は、戸籍(こせき)や計帳(けいちょう)などの公文書や暦などさまざまなことが書かれています。古代は文字資料がほとんど残っておらず、遺跡から出土する文字資料(木簡(もっかん)や漆紙文書)は当時のことを理解するために非常に重要な資料となります。
今回出土した漆紙文書は、土師器(はじき)という土器に張り付いた状況で見つかりました。文化ふれあい館にある赤外線カメラを通して確認した結果、女性の年齢を想像させる「□女年□十五」(※□は文字不明)という文字が記載されることから戸籍や計帳である可能性が高いと考えられます。また、その文字の上から「眷□」のような字が書かれています。一見「春」のように見えますが、下が「目」であることから「眷」という字が書かれていると考えられます。またその下にも、薄らと字が書かれています。一枚の紙に「□女年□十五」という字の上から、「眷(けん)□」と書いたことは明らかですが、どのような意図があったかは分かっていません。また、この漆紙文書は2枚の紙が重なっている状況で見つかっています。
今回の調査では、漆紙文書のほかにも、文字を書くために必要な硯(すずり)や文字が書かれた木屑(きくず)(木簡片)など、文字を書くことに関係する遺物が見つかっています。以前紹介した「建物跡1」と合わせて、水城小学校付近が役所の一部であった可能性が考えられます。

文化財課 福盛 雅久(ふくもり がく)

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