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自治体の皆さまへ

手と手をつないでNo.380

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福岡県太宰府市

山口 裕之(やまぐち ひろゆき)
(マザー・アース人権啓発研究所主宰)

■地域で共に生きる、共に学ぶ、共に歳をとる
○ひろしさんとの出逢い
私は小学校教諭をしていた時代、小学4年生の学級でひろしさん(仮名)を担任しました。知的障がいのあるひろしさん本人と保護者の願いにより、在籍する特別支援学級よりも私のクラスで学習する時間が多くとられました。ひろしさんは学習内容の理解には時間がかかりますが、自然や生命をみつめる感性、芸術的なセンスなどにキラリと光る個性的なものがあり、周囲の子どもたちはひろしさんの言動から多くの気づきと学びを受けとめていました。
ひろしさんは自分の伝えたいことがあるとき、周囲の状況に合わせてタイミングを合わせることや、話す内容を選ぶことは苦手でした。また大変世話好きで、相手の気持ちはおかまいなしで可能な限りできることをしてあげようとしていました。集団生活の中で友だちの反応やアドバイスを受けとめながら少しずつ周りの様子を配慮して言動を選ぶようになりました。

○大人になって
ひろしさんは学業を終えて社会福祉施設で働くようになってもずっと私とつき合ってくれました。バスをいくつも乗り継いで私の職場に小学生時代の同級生の様子や新たに出会った人のことを報告しに来ました。携帯電話を持つようになってからは、伝えたいことができたときには私が電話に出るまで繰り返しかけ続けます。
現在ひろしさんは42歳になります。働きながら地域で自分が関わる組織やイベントを増やし続けています。地元の公民館の研修会や行事、子ども食堂、ボランティア活動や選挙の応援など、実に多くのところに参加しています。

○地域社会でともに生きる
私は教職を終えてもこの地域に関わらせていただいていますが、いつも感じるのは地域の人々のひろしさんに対する理解と受け入れるぬくもりです。小学校時代からのひろしさんの個性や得手不得手を知ったうえで時には褒め、時には指導し、力を借り、地域住人の大切な一人としてともに生活しておられます。
私が毎月福祉レストランで行っているオカリナコンサートにもひろしさんはスケジュール調整をして可能な限り出席しています。5年以上前から自称コンサートスタッフとなり、90分の私の演奏の半ば頃で出演し、身の回りの報告と学校生活で使っていたリコーダーのアドリブ独奏をしています。初回は25分間語り続けお客様は戸惑ってもおられましたが、今では内容を5分ほどのステージにまとめ、コンサートの人気者となっています。先日は障がいのある友だちを連れてきて一緒に歌を披露しました。
ひろしさんは、一番うれしいことは「みんなのために働くこと」「みんなを笑顔にすること」だと言っています。そんなひろしさんも、ひろしさんにかかわる人々もお互いをそれぞれの色合いで照らし合っていると思います。

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