山口 裕之(やまぐち ひろゆき)(マザー・アース人権啓発研究所主宰)
■人権について学ぶということ
○私が出会ったある高齢者
私はある公民館に縁をもらい人権などの講座で年間3回お話ししたことがあります。そこで毎回一番前の席でにこにこしてうなずいたり考え込んだりしていた一人の高齢者の姿が印象に残り、話しかけてみました。その時、さらりと語られた次の言葉が忘れられません。「私は90歳もだいぶ越えて天国が近づいてきたのを感じています。せめて死ぬ前に人権の話に向き合い、自分の心の中でこれまでにまとってきた間違った思い込みを脱ぎ捨てて、きれいで軽い魂になって旅立ちたいと思っています」
毎回会場まで送迎していた家族の笑顔も心に残っています。
○学ぶことは自分が変わること
私たちは一人一人がこの世に生を受けてからさまざまな出会いや学びを経験し、自分の中の知識や認識をもとに言動を選択しています。この選択のもとになる経験を大別すると、個人的経験(自分の周りの人や社会情勢、メディアなどから得られる個別の経験や学び)と社会的な教育内容(学校の授業や研修会などで得られる整理された経験や学び)とがあるといわれます。個人的経験の中には根拠がなく差別的で偏見に満ちたものもありますし、長い期間を経て自分の中で凝り固まっているものもありますから、正しい学びと向き合い自分の知識や認識をアップデートしていく事は大切な営みだと思います。
○豊かな出会いと生き方を創るために
自らの誤った認識を少しずつ改め、より良い関係や地域社会を創り出していくためには、さまざまな場面で新たな出会いや学びの機会にふみ込んでいくことが必要だと思います。
それはこの同じ空の下をともに生きている人々のためでもあり、同時に自分自身に豊かな出会いと生き方を整え創っていくためでもあるのです。
さまざまな立場で生きている私たちがお互いの声や経験、願いをしっかり受けとめ合い、周囲の差別や不合理に気づき、これらをどうやってなくしていくかをともに考えていく場をこれからも充実させていきましょう。
最後に私がかつて書きとめました詩をひとつ紹介します。
○スピリット(山口裕之)
思い出してください。
人は愛を学ぶために
この世に生まれてきたことを。
つらさ・切なさ新たなハードルと向き合うとき、
人は命の根を深く伸ばしていることを。
あなたの思いと行動が
周囲を明るく照らしてきたことを。
この世は必ず変えられます。
そのために必要なのは心の底から
そのことを念じ、
くもりのないスピリットをもって
行動し続けること。
道は必ず拓けます。
たくさんの出会いがこれからも
あなたを待っています。
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