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太宰府の文化財(465)

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福岡県太宰府市

■佐波理(さはり)の匙(さじ)(スプーン)二 特別史跡大宰府跡(客館跡)出土 奈良時代
これは、平成21(2009)年に西鉄二日市駅近くの発掘調査(大宰府条坊跡第277次調査)で出土した青銅製の匙の破片です。青銅は、銅を主成分とし少量の錫(すず)を含む合金で、このうち錫の割合が高いものを高錫(こうすず)青銅といい、「佐波理」とも呼ばれています。この資料については以前も本紙で紹介したことがありますが、当時は出土した背景が不明確でした。その後、この匙が出土した場所を含む一帯は古代の役所大宰府において外国使節などが滞在する施設「客館(きゃくかん)」だとわかりました。この匙は、客館での食事に使われたと考えられ、出土した場所の近くには井戸や倉庫とみられる建物の跡もあり、客館の中でも給仕に関わるエリアであったと想定されています。
匙の細部を見てみましょう。匙面と柄のフチに、幅0.5mmにも満たない細い線が刻まれています。また、匙面の根元から柄に続く部分や、断面が長方形の柄の角の部分には、工具を使って表面を削った痕跡も確認できます。破片のため全長7.6cmと手のひらに乗る程度の大きさですが、この匙を製作した職人による丁寧な手仕事を垣間見ることができます。銅は柔らかく加工しやすい金属ですが、錫を多く加えると強固になる一方で割れやすく加工が難しくなります。薄く仕上げ、表面に装飾を施す作業は難易度が高いと考えられ、正倉院に類例があることからも、この匙は佐波理を作る高い技術をもっていた朝鮮半島の新羅(しらぎ)からもたらされたと考えられています。日本と新羅の交流を示す資料であり、もてなしの場であった客館跡を象徴する出土品の1つです。
令和5年度から、市文化財課では市内出土品を中心に文化財の三次元データのインターネット公開を始めました。通常は間近に見ることが難しい文化財を、スマートフォンやタブレットから好きな角度で細部まで見ることができます。この佐波理の匙も公開していますので、今回紹介した細部の加工もぜひ見てみてください。

文化財課 遠藤 茜(えんどう あかね)

※平成22年9月号掲載の太宰府の文化財304「佐波理の匙(スプーン)」

○文化財の三次元データを公開中
市ホームページ(ページID:30679)からもアクセスできます。太宰府市の三次元文化財について、アンケートへの協力をお願いします。
三次元データ共有サービス「Sketchfab(スケッチファブ)」太宰府市文化財課公式ページで、市指定文化財や関連資料の三次元データを公開しています。(本紙またはPDF版に掲載の二次元コードをご利用ください)

インターネットで公開している佐波理の匙の三次元データは、本紙またはPDF版掲載の二次元コードよりご覧ください。

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