■江口いとさんとの出会い(2)林内 隆二(はやしうち りゅうじ)
(小学校英語専科教諭)
前回、令和6年7月号で、わたしが所属する人権バンド「願児我楽夢(がんじがらめ)」の楽曲「招かれなかったお誕生会」は、江口いとさんとの出会いからできたものだと紹介しました。門司港で行われた同和問題研修会でのコンサート終了後、参加者の一人の保育士さんがいとさんのことを教えてくれました。それは、80歳を過ぎてもなお、差別解消のために日々全国を行脚しているいとさんの姿でした。
早速バンドのメンバーがいとさんの自宅に向かいました。いとさんの自宅の近くまで行き、「今からおじゃましていいですか」と電話しました。すると、いとさんからは「だめです。1時間後に来てください」と言われたそうです。「何だろう」と思いながら1時間後に行ってみると、通りから入るいとさんの自宅へと続く小径に綺麗に打ち水がされていました。通りに水をまくことは、もてなしの心です。初めていとさんの自宅に上がると、いとさんは「まだよく冷えてないかもしれませんが」と言って、すいかを出してくれました。いとさんの待ってくださいと言った1時間は、打ち水をし、すいかを冷やすための時間だったのです。初めての客人に何という心遣いでしょう。いとさんの温かい人柄を知るには十分でした。
後日、メンバー全員でいとさんを訪ねました。そして、いとさんの詩に出会って感動して曲を作ったこと、「招かれなかったお誕生会」を自分たちの原点に、1回目のコンサートから大事に歌ってきたこと、今後も歌い続けたいことを伝えて、曲を聞いてもらいました。曲の半ば、いとさんの頬を涙が伝いました。「やがて私がこの世を去る時が来ても、私は皆さんの歌の中に生きていくことができます。ありがとう」と言ってくれました。それ以来、いとさんと私たちメンバーの付き合いは10年の月日を数えました。
社会教育課 教務係
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