■特別展「はにわ」
九州国立博物館開館20周年特別展「はにわ」で展示されている、「埴輪(はにわ)力士(りきし)」を紹介します。現在の力士と同じような体形で、裸にまわしを締め、土俵に塩をまく時のような所作をしています。
この力士は、大阪府高槻市・今城塚(いましろづか)古墳の、大規模な埴輪群像の一員でした。今城塚は6世紀前半の日本列島を代表する最高権力者である「大王」の墓と考えられています。
埴輪と力士、この両方の祖として『日本書紀』に記録された人物がいます。野見宿禰(のみのすくね)です。彼は当麻蹴速(たいまのけはや)との取り組みのため出雲から呼び寄せられ、勝利しました。また、埴輪を作ることも野見宿禰が始め、宿禰の子孫は葬儀をつかさどる土師(はじ)氏となったとされています。
しかし、仏教が広まり、古墳の造営も行われなくなる中で、土師氏の性格は変化し、奈良時代には律令官人として活躍するようになっていました。『続日本紀』によると、781年に土師古人(はじのふるひと)は改姓を申し出、菅原(すがわら)氏を名乗ることになりました。古人のひ孫が、菅原道真(すがわらのみちざね)です。
相撲にも菅原道真にも縁の深い太宰府は、野見宿禰が始めたという埴輪とも、縁が浅くないと言えるでしょう。
九州国立博物館 学芸部長
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