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清水寺竹灯籠 広がる明かりの輪(1)

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福岡県宮若市

宮若市の年末の風物詩 黒丸地区清水寺の竹灯籠。
黒丸むらおこしの会のみなさんが協力して制作し、毎年趣向を凝らした内容で訪れた人々を楽しませてくれています。
十四回目の開催となる今年。
新たな取組に挑戦しているとの情報をいただき、竹灯籠制作の現場を取材しました。
イベントの継続に奔走する人、趣旨に賛同して一緒に作る人、竹灯籠の魅力を広める人。
明かりの輪が広がり、みんなの思いは年末に向かって高まっています。

■黒丸むらおこしの会 松田 欣也(まつだ きんや)
黒丸むらおこしの会の発足当初から活動を続けている松田さん。
竹灯籠を作り始めたきっかけやさまざまな転換期、これから目指す姿について語ってくれました。

[プロフィール]
北九州市生まれ。高校1年生の時、黒丸地区に転居。旧若宮西小学校・宮若西中学校のPTA会長を務め、現在、宮若市学校運営協議会委員。市役所職員として働く傍ら、清水米の生産や竹灯籠作りを精力的に行い、黒丸地区の魅力創出・発信に尽力している。

◇大好きな黒丸を盛り上げたい
黒丸地区は、雲海を臨むことができる素晴らしい景観や、黒田藩に献上されていた清水米など自慢できることはたくさんあるのですが、私がここを気に入っているのは、現在ではすたれつつある、昔ながらの親密な近所付き合いが継続しているところなんです。しばらく顔を見ない時には、「元気にしとるんかね」と、お互いを気遣い、ご近所さんが大きな家族のようなんです。今の時代、こんな濃密な人間関係はなかなか築けないんじゃないでしょうか。私の娘も小さい頃から近所のおじちゃんおばちゃんに構ってもらいながら育ちました。今は社会人になりたてなのですが、黒丸で鍛われたコミュニケーション力で、目上の人との付き合いも全然苦にならないと言っています。
地区のシンボル、清水寺では、従来、大晦日の夜には除夜の鐘をつきに初詣客が多く訪れ、とても賑わっていました。ですが、黒丸地区においても昨今の少子高齢化や若者の都市部流出の煽りを受け、初詣客も来ない閑散とした大晦日が続くようになったんです。
そこで、「このままじゃいけない、何かできることはないのか」と、地域の仲間で話し合いました。案を出し合った結果、竹灯籠をしてはどうだろうかとの話になりました。東日本大震災が発生した年でもあり、復興を祈る意味も込めて、竹灯籠のイベントを始めることになったんです。それが『黒丸むらおこしの会』の始まりでした。

◇宮若の風物詩になるまで
竹灯籠のイベントをすることを決めたのはいいものの、最初はノウハウが全くありませんでした。ただ、設置場所は清水寺の境内で、時期は12月30日、31日の二日間としました。この決定からイベント開催までが、なんと一ヶ月を切っていたんです。当時の会長が竹灯籠を制作している日田市に視察に行き、竹を切って彫っては並べ、とにかくがむしゃらに準備を進めました。いろんな人の協力もあり、記念すべき最初の開催は大盛況のうちに終了しました。
そこから徐々に会員の竹灯籠制作の技術も磨かれていき、毎年世相を反映したテーマに制作するなど、工夫を凝らしたイベントに成長していったんです。新聞などでも度々紹介され、宮若の年末の風物詩に定着したなという実感がわくようになりました。
また、平成30年から宮若西小学校が竹灯籠作りに参加してくれるようになりました。先生方も熱心で、イベント終了後、竹を焼いて竹炭にするまで一緒に行ったんです。地域のことを知るだけでなく、竹をリサイクルするという環境学習にもなる、非常に良い取り組みだと感じていました。

◇変化する社会 決断の連続
令和二年、新型コロナウイルスが社会を一変させました。竹灯籠も内容を縮小せざるを得なくなり、この年はイベント開催ではなく干支の竹灯籠のみ飾りました。翌年からは、密を避けるために開催期間を長くするなど、形を変えて復活しました。
実は、長期開催できるようになったのは、令和3年からトヨタ自動車九州の協力を得られるようになったからなんです。トヨタ自動車九州の環境部門の方と、社会貢献活動を通じて繋がることができ、脱炭素の取り組みとして、竹灯籠の明かりをろうそくから、水素自動車『MIRAI』で給電するLED方式に変えたんです。ろうそくの入れ替えは大変な作業で、大きな転換点でしたね。
一方で、悲しい出来事が会に訪れました。発足当初からの中心メンバーであった顧問と会長が、この数年で相次いで急逝してしまったのです。コロナ禍からの転換が軌道に乗ってきた矢先に、残されたメンバーの精神的ショックは大きかったです。また、ここ十年近く、年末の過密スケジュールも負担となっていて、今後の会の存続について、様々な意見が交わされました。その結果、会に残ると決めたのは七人。その中で発足当初のメンバーは私だけになりましたが、新たな体制で再スタートすることになりました。

◇新たなステージへ
今年は、新体制になって初めての竹灯籠制作シーズンを迎えています。圧倒的に彫り手が足りなくてどうしようかなと考えたとき、小学校との取り組みをもう一度やりたいと思ったんです。学校に相談したところ、宮若西小学校と宮若西中学校から竹灯籠制作の快諾を得ました。その後、さまざまな縁で、乙野の里山ようちえんと鞍手竜徳高校も制作に協力してもらうことに決まりました。このほか、旧若宮西小学校のPTA会長らで結成された西山有志会、竹の伐採では市観光協会、トヨタ自動車九州も引き続き電力供給の協力をしてもらえます。
このような多くの方々との縁を大切にして、竹灯籠作りを進めています。制作に参加する人、特に子どもたちは、竹灯籠作りという特別な経験をきっと忘れないと思うんです。大人になったときに、「うちの地元で竹灯籠作りをしたな」と、ふるさとを思い出すきっかけになると思います。
準備は大変ですが、喜んでくれる人、楽しみに待ってくれている人の顔を思い浮かべると、やらないという選択肢はありません。いろんな人の手で作られる今年の竹灯籠を、関係者をはじめたくさんの人にぜひ見に来てほしいですね。

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