■Part3 企業編
社員は、家族も同然の存在。
◆家庭の『和』があってこそ、企業が発展するんですよ。
近年、定年まで一つの企業で働くことを前提としない若者が増え、自己成長を支える仕組みやライフスタイルに対応する新たなニーズが高まっています。
市内を拠点とする九州小島株式会社では、社是(しゃぜ)「和」を基盤に、社員一人ひとりの成長と家族のサポートを重視しながら、ものづくりに挑戦。多様化するライフスタイルに対応した制度の充実にも力を入れ、社員がより安全で安心して働ける環境を提供しています。
同社が掲げる「和」とはなにか、そして現代の働き手にどのように寄り添っているのか、九州小島株式会社 取締役社長の小栗真一さんが語ります。
九州小島株式会社
平成18年 小島プレス工業株式会社の九州拠点として、小竹化成株式会社創立
平成28年 九州小島株式会社へ社名変更
最初はトヨタ自動車九州が生産する高級自動車「レクサス」のボディの下回りを手がける工場としてスタート。その後、内装品、電子部品、エンジン部品の製造へと領域を広げ、現在では内外装部品の専門工場として歩みを重ねています。
九州小島株式会社 取締役社長
小栗 真一(おぐりしんいち)さん
岐阜県出身。現在63歳。岐阜県にある明和工業株式会社に就職。3年前にグループ会社である九州小島株式会社に赴任。
お酒を飲みながら楽しく会話するのが大好き。
◇和の始まり
和の始まりは、母体会社である小島プレス工業所の創業までさかのぼります。創業者の小島濱吉は千葉の船大工の次男として生まれ、十二歳の時に見習い工として東京に行き、その後名古屋へ移りました。
名古屋市熱田神戸町(現熱田区)で『小島商店』を開業し、蚊取り線香や懐炉(かいろ)を販売。一年を通して取り組める仕事を探していく中で、トヨタ自動車の存在を知ります。どうにか取引をしたいと、毎日足繁く通っていました。その努力の結果、当時の社長と会うことができ、「この中の部品で作れるものはありますか」と聞かれ、製造可能なものを持ち帰り作り始めました。これがトヨタ社の部品製造のスタートであり、社是『和』の始まりとなりました。
もともと『小島商店』は家族経営で、『小島プレス工業所』と名前が変わっても自営業的な形態でした。
それからしばらくして、仕事を続ける上で、家族の支えが不可欠であるという信念が根付いてきました。「家庭の和が取れていなければ仕事に集中できない」と。家庭が不安定な状態では、仕事に打ち込めないですよね。
まずは、家庭の円満を目指し、そこから企業の『和』を築くことが会社の発展につながる。この精神が現代まで受け継がれ、社是『和』の礎となったんです。
◇社員とその家族を思った福利厚生
小島グループの福利厚生は、その家庭的な雰囲気の中から生まれました。昼食は社長の奥さんが用意したものを食べるスタイル。この仕組みが、現在の無料給食制度へと発展していったんです。忙しい時期にはおにぎりやアイスキャンディーが配られるなど、従業員を支える温かな取り組みが福利厚生の原点となりました。
現在の給食制度では、地産地消を基本としています。ここ九州小島では、『宮若うまい米コンクール』で評価されたお米などを取り入れています。社員からも好評を得ており、地域とのつながりを大切にした取り組みが評価されています。
愛知県や岐阜県にあるグループ会社では、会社が持つ給食センターからの配送食を利用し、全社員が同じ昼食を共有する仕組みが整っています。実は、メニューを考えて自社で食事を作っているのは九州小島だけなんですよ。同じ釜の飯を食う社員同士、食事を通して、仲が深まっています。
福利厚生は単なる制度ではなく、家族を含めた全社員の幸せを重視しなければなりません。偉い人だけが恩恵を受けるのは、福利厚生とは到底言えませんし、会社も成長しません。
数ある福利厚生のなかで、節目を大切にしています。例えば、誕生日祝いとしてグループ内製のクッキーを送ったり、結婚記念日には、バラの花束がプレゼントされたりするんですよ。あとは、結婚や出産、お子さんの入学祝いなどで金一封を渡していたりします。
◇地域との共存と防災への取り組み
地域社会と共存共栄する企業として、令和3年7月に宮若市と災害時における協定を締結しました。災害発生時に市からの要請に応じて、施設内のホールなどを一時避難所として利用できるようにするもので、敷地内の給油所からは緊急車両や公用車、避難所などで必要な燃料も供給することになっています。
また、非常食の備蓄や、避難所としての活用を見据えた訓練を実施しています。防災訓練や消火訓練、救急訓練を通じて地域住民との協力体制を築きながら、安心できる地域づくりに貢献しています。
ほかにも、社員の家族や友人を招いて、市内のキッチンカーが出店するイベントを開催したり、市内の洋菓子店や、精肉店で購入したお菓子やお肉を、クリスマスなどに社員へ配布していたりします。
こうした取り組みを通じて、九州小島は、「家族の和」「企業の和」そして、「地域の和」を大切にし、地域に根差した企業として、これからも発展を続けていきます。
◆TOPICS5 九州小島の取り組み
ここで紹介するものはほんの一部
◇無料給食制度
社員食堂では、毎日無料で食事を食べることができます。
メニューは昼は定食、麺、夜は定食、丼から選ぶことが可能。
また、食堂横の休憩スペースでは、無料でジュースやお菓子を楽しむことができます。
無料給食制度について従業員に話を聞くと、「奥さんが弁当を作らなくていいのは、うれしいと言っていました。ドリンクも無料なので、会社にお金を持ってこなくてもいいんですよ」と、話してくれました。
◇社員専用ガソリンスタンド
敷地内にある専用ガソリンスタンドでは、市場価格よりリッター10円ほど安く給油することができ、併設する洗車機は無料で使えます。
◇工場内にエアコンを完備
社員が働きやすい環境を整えるため、工場内にはエアコンを完備。夏でも冬でも快適に仕事をすることができます。
◆TOPICS6 地産地消の取り組み
◇宮若うまい米コンクール
このコンクールでは、米の成分を計る「食味計」と米粒の整粒度を調べる「穀粒判別器」による玄米分析を行っています。宮若うまい米コンクールの受賞米と、実行委員会が定める基準に達した米は、追い出し猫をモチーフにしたオリジナル米袋や、品種シールを使用できます。
また、評価をされたお米は市内小中学校の給食や、市内飲食店などで使用されています。
<この記事についてアンケートにご協力ください。>