■Part4 地域編
先進地から見えてくる、女性の目線と経験。
◆多様な住民参画には人の意見をよく聞いて、お互いに声かけをすること。
5パーセントから10パーセントへ。内閣府では自治会長の女性が占める割合を引き上げるよう数値目標を掲げています。
その狙いは女性活躍という一面だけでなく、女性がもつ視点や配慮が課題解決の一助になるとのこと。今回、飯塚市自治会連合会の中村香代さんの体験から、その軌跡を読み解きます。
飯塚市自治会連合会 会長
中村 香代(なかむらかよ)さん
自治会長に就任して25年目。昨年の6月に自治会連合会会長に就任。飯塚市在住。現在77歳。趣味はテニス。
◇担い手とリーダーのギャップが見えてくる
地域で行われる様々な活動は、主婦を始めとした女性が多く担ってきた一方で、PTAや自治会における会長職などの役職は、男性がその多くを占めています。そのような中、飯塚市で二十五年間、自治会長として取り組んできたのが、中村香代さんです。
「私は平成11年から自治会長を務めていますが、これまで女性だからといって特別扱いを受けたことはありません。むしろ、地域の皆さんから協力を得られていることを、非常に恵まれていると感じています。『特別扱いされなかった要因はなんですか』と、聞かれることがあるんですけど、特別なことをしているつもりはありません。ただ、人の意見を聞くことは大切にしています。
意見を聞くことで、新しい視点で物事を考えられるだけでなく、こちらからも自分の意見を言いやすくなります。このようにコミュニケーションを重ねていくことで、自然と人との輪が形成されていきます。この輪の中では、性別や年齢に関係なく、誰もが対等な関係で話し合い、意見を共有することができるのです。そして、お互いの意見を尊重し合いながら議論を重ねることで、最終的にはみんなが同じ目標を目指せるようになります。
ほかには、声かけが重要だと思っています。例えば、地域で集会やイベントを行う際、初めは何をどうすればいいか分からない人も多くいます。そのような場合、私たちが『お弁当を配ってもらえますか』とか『お茶を沸かすのを手伝ってください』と、声をかけることで、次回からは自分から率先して行動してくれるようになります。それぞれの得意なことやできることを活かし、性別や年齢で区別せずにみんなで協力し合う。これが人間関係を円滑にするコツだと思っています」。
◇次世代を担う子どもたちを取り込む
「本年度から特に力を入れている活動の一つが、小学校への出前授業です。この授業では、自治会に関する○×クイズや、児童から自治会長へのインタビューを行っています。また、自治会の活動を楽しく伝えるために作成した、『自治会のうた』を子どもたちと一緒に歌うこともあります。この歌はラップ調で、小学生たちに大人気なんです。
『もう一回聞かせて!』と言われることも多く、自治会活動に興味を持つきっかけになっています。こうした活動を通じて、子どもたちが、『自治会の活動がこんなに面白いんだ』と実感してくれると、その子たちが家庭で自治会の話をしてくれます。その結果、保護者が自治会に興味を持ち、新たに加入してくれることもあるんです。
また、ゴミ拾いや朝の交通安全パトロールなど、普段当たり前に感じている地域の活動がすべて自治会によって支えられていると知ると、『自分たちも自治会に入りたい』『将来は自治会長をやってみたい』という声が子どもたちから聞かれるようになります。うれしいですね」。
◇女性が地域に関心をもつきっかけづくり
「性別や年齢に関わらず、それぞれの人が持つ個性や強みを活かしながら、地域全体でより良いまちを目指すこと。それが私の自治会活動における信念です。そんな自治会活動の魅力は、地域のつながりが深まることです。一人ではできないことも、みんなで力を合わせれば形にできます。地域住民同士が支え合い、コミュニケーションを大切にすることで、安心・安全で住みやすいまちが作られていくのだと思います。
『虎穴に入らずんば虎子を得ず』ということわざがあります。これは私の座右の銘でもあります。何事も自分から積極的に挑戦してみなければ、その本当の価値や成果を知ることはできません。自治会活動も同じです。最初は緊張したり、困難を感じたりすることもありますが、実際にやってみることで得られる充実感や喜びはとても大きいものです。
私も自治会連合会の会長に就任した当初は不安でしたが、今では毎日が楽しみで、わくわくしながら活動をしています。
まず、女性が自治会のことに関心をもつことで、地域を明るく楽しく盛り上げます。そうすることで、家庭が良くなり、市全体も良くしていくことにつながると思っています。これからも歩み続けます」。
◆TOPICS7 新しいコミュニティのカタチ
◇失えない地域のつながりを次世代に継ぐ 行政と地域住民の対話から課題解決へ
自治会員の高齢化、役員の担い手不足など、自治会を取り巻く環境は厳しさを増しています。宮若市の自治会への加入率は53パーセントであり、下降を続けています。一方で、災害時の対応や防犯活動、見守り活動など、地域コミュニティの役割は増す一方です。
そこで市では、令和5年度より、中ブロック協議会をモデル事業として、新しいコミュニティの「カタチ」を模索しています。自治会長をはじめ、地域住民の皆さんとワークショップを通じて、中ブロック自治会の魅力や課題を改めて意見交換しながら、持続可能な組織として維持していく必要性を再確認しました。今後は、事業計画を策定し、新たな組織活動への足がかりに取り組んでいくことになります。
市では、このようなモデル事業を他のブロックにも広げていきたいと考えています。個々のコミュニティが持つ特色を活かした再編を通して持続可能な組織作りに取り組みます。
◆TOPICS8 先進地が仕掛ける全方位戦略
◇「自治会×歌」異色のコラボで発信
飯塚市では、若い世代(Z世代・ミレニアル世代)にも自治会活動に興味を持ってもらいたいとの思いで、オリジナルソング「自治会のうた」のミュージックビデオを飯塚市自治会連合会と一緒に制作しています。本紙のQRコードから視聴することができます。
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