■こうのとりのゆりかご~母と子の幸せを願って~
「こうのとりのゆりかご(赤ちゃんポスト)」は、親が何らかの理由で養育できないこどもを「匿名で緊急」に受け入れる施設であり、平成19年5月に、熊本市にある慈恵病院が病院内に設置し、運用を開始したものです。
この病院では、平成14年から、望まない妊娠に悩む女性のために、「赤ちゃんのための電話相談(現在は「SOS赤ちゃんとお母さんの妊娠相談」)」を実施するなど、早くから胎児やこどもの命を守るための取り組みを行っていました。さらに、遺棄されて命を落とす新生児や人工妊娠中絶で失われていく命を救いたいとの思いから、ドイツの取り組みなどを参考として、匿名でこどもを預かる施設「こうのとりのゆりかご」が設置されたのです。“小さないのちを救いたい”との思いからうまれたこの施設は、赤ちゃんとお母さんの将来の幸せのための相談を受けること、育てられないこどもを受け入れることを一体として運用されています。
昨年12月の人権週間に、うきは市で開催された講演会で講師を務めた宮津航一さんは、「ゆりかご」の開設初日に3歳でこの施設に預けられた人です。その講演では、自分の命をつないでくれた「ゆりかご」への感謝の思いを語りました。遺棄や虐待などによりこどもが亡くなっている現状から、最後のセーフティーネットとして「ゆりかご」の必要性と、法整備の早期実現を訴えました。
「ゆりかご」の設置から17年以上が経過し、令和5年度末までに179人のこどもの命が救われ、母子の孤立を防ぎ適切な支援につながっています。
妊娠を誰にも相談できずに自宅出産(孤立出産)するなど、「ゆりかご」に匿名でこどもを預けなければならない状況を生む背景には、当事者を追い詰める社会環境という課題もあります。
その課題を解消するためにも、望まない・予期しない妊娠であっても安心して相談できる体制をさらに充実させることが必要です。また、地域と社会でこどもたちを見守り、親と一緒になって育てていく「大きなこうのとりのゆりかご」ができたなら、「誰もが幸せに暮らせる社会の実現」につながっていくのではないでしょうか。
問合せ:市人権・同和対策課
【電話】52-1174
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