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歴まちコラム ~歴史と文化のふる里探訪~

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福岡県添田町

■能の演目にある添田町の民話「花月」
日本の伝統芸能の一つである「能」には「花月」と呼ばれる、英彦山にまつわる演目があります。今回の歴まちコラムでは、その「花月」に関する物語を紹介します。

英彦山にまつわる演目「花月」は、作者は不明ですが、室町時代に能を確立したと言われる世阿弥(ぜあみ)の作品と考えられています。
花月とは、英彦山の山すそに住む男が、7歳の息子が行方不明になったことをきっかけにお坊さんとなり、全国へ修行の旅に出る場面から始まります。お坊さんが京都の清水寺へたどり着いたとき、門前の人に何か面白いものはないかと聞くと、門前の人は花月という少年が面白い舞(まい)を踊ると答え、花月を呼び出して一緒に歌を歌います。その後、花月は桜の花を踏み散らすウグイスをこらしめるため弓を射ようとしますが、生き物を殺してはいけないという仏教の教えに従い、思いとどまります。その姿を見ていたお坊さんは花月が行方不明になった自分の息子だと気づき、父と子が再会するという物語です。
町内には花月にまつわる伝承が残る場所が2か所あります。1つは、英彦山神宮奉幣殿から参道を少し下り、右側(北側)へ行く石だたみの小道にある「花月石」と呼ばれる石で、もう1つは、上津野高木神社近くの九州自然歩道を英彦山方面へ15分程度登ったところにある「七ツ石」と呼ばれる大きな石です。2つの石とも花月が英彦山で勉強をした帰りに座って休んでいたところ、天狗(てんぐ)にさらわれた場所と言われています。「七ツ石」の名称は花月が7歳のときにさらわれたことに由来しているようですが、一説には大きな石が点々とあり、まるで北斗七星の形をしていることから、その名前が付けられたとも伝わっています。
英彦山では、かつて「彦山の七ツ隠し」と言って、子どもが外で遊んでばかりいると天狗にさらわれると、親が子どもに花月の話をして注意したと言われています。「花月」の物語は長年、能の舞台で演じられ、これからも多くの人々を楽しませていくことでしょう。そしてそれとともに、地域でも花月にまつわる伝承は大切に語り継がれていくことになるでしょう。
〔文・西山紘二学芸員(商工観光振興課歴史文化財係)〕

参考文献:添田町『津野』昭和42年、添田町『添田町史』平成4年

問合せ:役場商工観光振興課歴史文化財係
【電話】82-1236

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