■迎春万歳
添田町長 寺西明男
新年明けましておめでとうございます
お正月、いかがお過ごしでしょうか
2025(令和7)年、巳年です。巳年は古代から再生や永遠の象徴とされ、皮を脱ぎ捨て新たな姿に生まれ変わる姿がその象徴となっています。こうした意味から、巳年は新しい挑戦や変化に対して前向きな姿勢を示す年とも解釈されています。また、巳年はお金に困らないとも言われています。
今年は、添田町を「にぎやかな過疎」にしていきます。人口減少・高齢化等言われて久しい中、皆さんが楽しく過ごせる町にしていきましょう。
「にぎやかな過疎」これは、昨年全国山村振興連盟の福岡県理事として理事会に出席した際、明治大学農学部教授小田切徳美先生の講話での話です。このことについて小田切教授はこう言っていました。「にぎやかな過疎」とは、「過疎地域にもかかわらず、にぎやかだ」という矛盾した印象を醸し出している農山漁村を表現した言葉です。あるとき秀逸なテレビドキュメンタリー(テレビ金沢「にぎやかな過疎|限界集落と移住者たちの7年間」2013年放送)を見て、そのタイトルを拝借して「にぎやかな過疎」と称したと言う事でした。
人口減少は続くものの、小さいながら新たな動きが間断なく起こり、ガヤガヤしている雰囲気が伝わってくる街を創ると言うものです。「にぎやかな過疎」にしていくと言っても、当然のごとく何もせずに、そのような地域が形成され、持続化するものではありません。そこでは、総合的な取り組みが必要となります。
そこで特に重要な要素として、次の3点に取り組んで行こうと思っています。(1)人材育成、(2)関係人口の拡大、(3)地域運営組織の拡充です。
人口減少社会で生き抜く、新しい仕組みをつくることが必要です。人口が減るから「消滅する」と考えるのではなく、むしろ「新しい仕組みをつくろう」という事です。
今までにない発展のしくみをつくるヒントは、自分の属する地域や系統を考えることだけからは生まれてきません。そのヒントは異質の系統の中にこそ潜んでいるといえます。したがって、異質の系統との行き来や交渉すなわち交流が、新しい発展には不可欠ということになります。端的に言えば、それは関係人口の拡大です。
ここ数年、若者の田園回帰と言われています。中々実感が伴いません。何故だろうと突き詰めて考えると、行き当たるものの一つに「しごと」と言うものがありました。
「そもそも農山村であり、仕事などないから持続的な定住などは無理だ」と多くの方から言われ、私もその様に感じていました。
何とか打破しようと、これまでも取り組んで来ましたが、これからは更にこの点について2つの視点が必要だと思ったところです。
一つは、実態を見ても、移住者、特に若者は、起業の他、サテライトオフィスのように「仕事を持ち込む」(移業)、「地域にあった古くからの仕事を新しい形で継ぐ」(継業化)、そして、例えばカフェ経営とデザイン事務所経営の組み合わせ等「いろいろな仕事を合わせる」(多業化)という対応をしています。つまり、若者は「起業」「移業」「継業」「多業」というかたちで仕事をつくり始めています。
このような仕事づくりのためには、短期的には、起業のための資金、ノウハウを相談する機会の提供等が欠かせません。町としても創業支援や相談の機会も、来るのを待つだけで無く情報発信等、まだまだ強化しなければなりません。
さらに、「仕事がないから帰れない」と聞きます。ここはその意識を変えて貰う、「仕事を創りに帰りたい」とする人材の育成が必要だと思っています。教育をはじめ関係機関に働きかける必要があります。
もう一つは、常勤雇用という仕事をつくる必要があると感じました。移住が活発化する中で、起業等の為に来ると言う人だけではありません。添田町に移住し農業をやりたいが独り立ちするまでには生活があり、どうしようかと躊躇しているなど聞きます。
半農半Xという農業半分他の仕事半分という制度もありますが、その他にも特定地域協同組合制度と言うものがあることを知りました。これは、2019年11月に議員立法として成立した「地域人口の急減に対処するための特定地域づくり事業の推進に関する法律」が根拠法です。
具体的にイメージすると、役場が設立支援し、農家、飲食店、製造業者、介護業者等を組合員とする特定地域組合を設立します。その組合が派遣事業を行います。町内外から集まる数名の若者が雇用され、各種の事業者である組合員の農家、飲食店、製造業者、介護業者等に派遣されます。それによって、各事業者は人手不足を穴埋め出来ます。人材派遣利用料金は事業者が負担するわけですが、行政からの補助もあり、合理的な水準に収まっており、安心して受け入れを継続する事が可能です。例えば4月は農業、5月から10月は飲食業、11月から3月は製造業などと、多様な仕事を行いながらも、雇用は無期常時雇用として安定しています。
そのため移住者等は、会社員(組合職員)として定住でき、彼らを巻き込んだ地域づくりも活発化する事になります。
良いことずくめのように見えますが、先発する事例を見ますと課題も見えてきます。(1)職員の採用難が顕在化している事です。多様な公募をしていますが、職業としての魅力が関係しており「単なる人手不足対策にはしない」としており、飲食店に事業継承を前提としたコースなど組合離職後の姿、つまり「出口」を想定した募集が必要としています。(2)女性の就業、(3)行政の移住相談窓口との濃密な連携が必要。組合は仕事・雇用者のマッチングに加え、時には職員の住宅の斡旋、家族の学校転入学のサポートなどの対応が同時に求められるからです。
2025(令和7)年は、この事を現実的な夢として取り組んでみたいと思います。どうか皆様のご支援ご協力をお願いしまして、年頭の所感といたします。
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