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歴まちコラム ~歴史と文化のふる里探訪~

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福岡県添田町

■鞍馬天狗にも登場 不思議な力を持つ英彦山
鎌倉幕府初代将軍、源頼朝(みなもとのよりとも)の弟、源義経(よしつね)。時代に翻弄され、悲しい最期を迎えた義経に関連する史料は少ないものの歌舞伎や能などの伝統芸能では数多くの作品が作られています。今回は義経に関する作品に登場する英彦山について紹介します。

皆さんは「判官(ほうがん)びいき」という言葉を聞いたことがありますか。弱い者や勝負事の敗者、不運の者たちに同情して、応援や手助けをすることです。言葉の由来は、源義経といわれており、「判官」とは義経が就いていた役職名のことです。義経は壇ノ浦(だんのうら)の戦い(山口県下関市)などで平家を追討し、鎌倉幕府の成立に大きく貢献しましたが、鎌倉幕府初代将軍で兄でもある頼朝から攻め立てられ、頼りにしていた藤原泰衡(ふじわらのやすひら)にも裏切られ、ついには自ら命を絶つまでに追い込まれました。世間は周囲の裏切りにより悲しい結末を迎えた義経に同情し、そこから立場の弱い者に味方や応援することを「判官びいき」というようになりました。
義経は残された史料が少なく、現在語り継がれているイメージの多くは後世に創作された『義経記(ぎけいき)』(室町時代・作者不詳)という物語によるものが大きいと考えられています。また、歌舞伎や能などの伝統芸能には義経に関連する作品が数多く創作され、例えば歌舞伎の『勧進帳(かんじんちょう)』や『義経千本桜』、能の『安宅(あたか)』、『鞍馬天狗(くらまてんぐ)』などがあり、これらの作品によっても義経のイメージが形作られたようです。
そのなかでも『鞍馬天狗』には「英彦山の豊前坊」というセリフがあります。この物語は京都の鞍馬山に住む大天狗と、それにお供する7人の天狗が牛若丸(義経)へ平家打倒のために剣術を教えるという内容です。大天狗のお供として英彦山に住む天狗(豊前坊天狗)の名前が挙げられており、人びとにとって全国各地に天狗伝承がある中でも、英彦山に住む豊前坊天狗は平家を倒し、ヒーローとなる義経に剣術を伝授できるほど特別な力を持つ天狗として考えられていたことが分かるでしょう。このことは能の演目『大江山』で英彦山の山伏に変装した金太郎が鬼退治できたように、人びとにとって英彦山とは何かしら不思議な力を持つ魅力的な山として考えられていたことを示す事例かもしれません。

文・西山紘二学芸員(商工観光振興課歴史文化財係)

問合せ:役場商工観光振興課歴史文化財係
【電話】82-1236

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