本市が目指す共生社会の実現。その担い手を育てるため、共生社会の先進国であるドイツに中学生11人を2期生として派遣しました。生徒たちの学びと成長の軌跡を紹介します。
■共生社会の実現へ向けて
本市は、東京2020パラリンピック競技大会の事前キャンプの誘致を機に、誰もが自分らしく生きることができる社会の実現を目指しています。市政の要である「田川市第6次総合計画」では、重点プロジェクトのひとつとして「共生社会の実現」を掲げ、パラスポーツの振興や心のバリアフリーの浸透など、さまざまな施策に力を入れています。
「田川市中学生海外派遣事業」もそのひとつで、国際感覚や多様性に対する感覚を身につけた共生社会実現の担い手を育成することを目的とした事業です。さまざまなものを感じて吸収することができる中学2年生という時期に、世界的な共生社会の先進国「ドイツ」で学んでもらうため、市内在住の中学2年生を対象に希望者を募集。厳正な選考で選ばれた11人が2期生としてドイツに赴きました。「派遣1期生の先輩の話を聞いて応募しました」という声が多く、生徒たちの関心や意欲の向上が進んでいます。
■街中に、人の心に宿る配慮
派遣期間は10月31日~11月11日で、生徒たちは約10日間にわたりドイツに滞在。ベルリン市、コトブス市、エスリンゲン市を巡り、各都市に色濃く残る歴史や文化のほか、共生社会の取り組みを学びました。生徒たちは、移動中や見学中など、さまざまな場面で障がいや言語の違いなどへの配慮を発見。街中の細部から人々の心や行動までバリアフリーが浸透していることを肌で感じ、深く感銘を受けていました。特に生徒たちの印象に残ったプログラムは、コトブス市でのスポーツ施設と学校の見学。障がいの有無に関わらず本格的な練習ができる環境や、障がいなどで通学できない生徒が小型ロボットを介して遠隔で学ぶことができる仕組みなど、先進的な実例に驚いていました。
◆(?)Frage なぜドイツは共生社会の先進国なの?
◎国際交流員のマーティンが答えます!
主な理由は3つあります。まずは「共生社会の定義」です。ドイツの共生社会は、障がい者のほか、慢性病や心の病気を患っている人も含めて共生するという、幅広い定義に基づいています。次に「当事者の参画」です。バリアフリー化などの企画にニーズがしっかりと反映されるよう、当事者が参画する仕組みが法制化されています。最後に「個人の自己決定」です。ドイツでは、自分のことは自分で決めて行動することが重んじられています。だからこそ、誰もが自己決定できるための環境を整えるという意味で、共生社会が築かれてきました。
【学びと絆(きずな)を、未来のチカラに。】
■新しい家族ができた
ホームステイも生活や食文化、コミュニケーションなどを学ぶ重要なプログラム。エスリンゲン市でホストファミリーの温かい歓迎を受け、各家庭での生活が始まりました。生徒たちは研修で学んだドイツ語やジェスチャーのほか、スマートフォンも駆使して積極的に交流。一緒に食事をしたりゲームや観光を楽しんだりしながら、笑顔の絶えない6日間を過ごしました。本当の家族のように接してくれるホストファミリーの温かさに感動し、最終日のお別れパーティーでは、互いに涙を浮かべながら再会を約束しました。
■芽生えた思いを広げよう
今回の中学生海外派遣事業をとおして「自分の世界が大きく広がった」「一人ひとりの意識の大切さを再認識した」「学んだことを共有したい。自分にできることから始めたい」「将来の夢に向かって頑張りたい」「また海外で学びたい・出会いたい」など、さまざまな思いが芽生えた生徒たち。現在は、それぞれの中学校で活躍しつつ、報告会などの機会をとおして学びを伝え、後進への道を開いています。
市では、今回の派遣が一過性のものではなく、共生社会の実現を後押しする取り組みとなるよう、これまでの派遣修了者を含め、共生社会に関する事業などに参加できるよう、引き続き連携を深めていきます。
共生社会実現への道のりは、これからも続きます。市民のみなさんのご理解とご協力、そして学びや体験の機会への積極的な参加をよろしくお願いします。
◆事後報告会を開催
帰国した生徒たちは、学んだことや楽しかった思い出、感謝の言葉などを家族に伝え、生徒と保護者それぞれが感想文に思いをつづりました。また、事後研修で報告資料を作成し、12月22日の事後報告会に臨みました。当日は、生徒代表・保護者代表各2人が感想文を発表。続いて、生徒たちによる研修内容の発表では、現地で撮影した写真とともに、気づきや学び、印象深かったことなどを説明しました。
このほかにも、生徒たちが通う各中学校で報告会が行われています。
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