■歯科・歯科口腔外科 薬剤関連顎骨壊死 〜お口の病気と薬の関わり〜
薬剤関連顎骨壊死は、骨粗しょう症の治療で使用する骨吸収抑制薬の影響によって、顎骨の骨髄炎や骨壊死が起こる疾患です。発症率は低いですが発症すると難治性で長期の治療が必要となります。
そのため、予防、早期治療が重要です。
◇なぜ骨吸収抑制薬が顎骨壊死を引き起こすのか
私たちの身体は、日々「代謝」が行われ、古くなったものを新しいものに置き換えています。それは骨も例外ではなく、骨は「骨吸収」により古い骨が破壊され、「骨形成」により新たな骨が作られます。
骨吸収抑制薬は骨粗しょう症の治療として、骨吸収を抑え、骨の破壊を防ぐ薬です。そのため、骨が細菌に感染し、炎症を起こした場合でも骨の代謝がうまく行われず、骨が細菌に侵されたままの状態が続いてしまうことがあります。
身体の中でも特に、口の中は常に多くの細菌にさらされているため顎骨において細菌の感染が起こりやすく炎症、壊死を発症します。
◇症状
初期では、顎や歯の痛み、歯肉の腫れ、顎の骨の露出、膿の排出、顎のしびれがあります。重症になると病的骨折(弱い力で顎の骨が折れる)、皮膚瘻孔(顎の外の皮膚に穴が開き膿が出る)を起こす場合があります。
◇治療方法
薬剤関連顎骨壊死の治療は、次のようなものがあります。
・消炎治療(抗生剤の投与)
・口腔内の清掃や洗浄
・壊死した骨の切除
・痛みの治療
これらの治療には、薬剤を処方した処方医との連携が重要となります。
◇予防と早期発見のために
薬剤関連顎骨壊死は、予防と早期発見が重要です。予防のためには、骨吸収抑制薬による治療が始まる前に、かかりつけの歯科医院を受診し必要な治療を受けましょう。早期発見のためには、骨吸収抑制薬の内服治療中は定期的にかかりつけの歯科医院を受診し、検診を受けることが大切です。
そして何よりも、日々の口腔内ケアで細菌を増殖させない清潔な口内環境を保つことが大切です。
◇スタッフ
天野 裕治
部長 昭和63年卒
[主な所属学会及び取得資格]
・日本歯科麻酔学会認定医
・日本障害者歯科学会認定医
藤田 弥千
部長 平成8年卒
[主な所属学会及び取得資格]
・日本口腔外科学会専門医
・日本口腔腫瘍学会
・日本口腔診断学会
<この記事についてアンケートにご協力ください。>