市長x対談 第66次南極地域観測隊・越冬隊員 太田計介(おおたけいすけ)さん

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第66次南極観測隊に選出された太田計介さんが、昨年11月に大塚市長を表敬訪問しました。

○PROFILE
高校卒業までを直方市で過ごし、大学卒業後にアパレル企業で働く傍ら、趣味で登山を始める。
20代からアルパインクライミングを中心に、沢登り、アイスクライミング、長期縦走、海外遠征と四季を通じて幅広く山を楽しむ。その経験を活かしてアウトドアブランドの企画・商品開発に携わる。
本格的な登山を経験する中で、登山に関する高い技術や知識を身に付け、山岳ガイドとして独立。その知識と経験、高度な安全管理技術を評価され、第66次南極地域観測隊の野外支援隊員として選出される。

▽山登りを始めたきっかけ
市長：山登りはいつから始めたのですか。小さいときは福智山にも登りましたか。
太田：直方では、小学校の遠足で鷹取山とかに登っていたくらいで、本格的に始めたのは社会人になってからです。山登りは趣味で始めたのですが、東京に転勤になった際に山岳会に入ったことで、本場の山々を巡りながら、どっぷりハマりました。
市長：登山といえば、有名な小説「氷壁」が思い浮かぶのですが、実はモデルとなった方は直方市出身なんです。
太田：鞍手高校の第一期生の方で、全国的に有名な登山家の石原國利(いしはらくにとし)さんですね。井上靖(いのうえやすし)さんが書いたナイロンザイル事件を題材にした小説のモデルになったのは知っています。

▽南極大陸越冬隊とは
市長：隊員として、具体的にはどのような活動をされるのですか。
太田：これまでは、研究者の方々に、1年ほどかけて、トレーニングや講習会をしてきました。現地では、野外観測支援を主な任務として、隊全体の安全管理も行います。いろんな観測地点に、ヘリコプターや、スノーモービル、雪上車で同行して、研究者の方々が野外で観測する際に、安全に活動できる状況をつくります。
市長：希望すれば参加できるものではないでしょうから、隊員に選ばれるには相当厳しい条件があるのではないですか。
太田：もちろんです。かなり厳しい基準をクリアしなければなりません。登山ガイドや自身の登山の経験はもちろんですが、高所登山やロープを使ったクライミングの技術が求められ、安全管理に関して高い技術が身についていなければ選ばれません。さらに、健康かどうかもとても重要です。南極では、医療に限界があるので、事前に何度も精密検査を受けて、クリアできなければ南極に行くことはできません。
市長：雪山では人が落ちてしまうような氷の割れ目があって、実際に落ちてしまうこともあると聞きますが、南極にも、同じような危険箇所がありますか。
太田：実は、南極大陸を覆っている氷は、内陸部の最も厚い場所では4000mもあるんです。その氷は、ゆっくりと沿岸に向かって流れ続けている氷河なんですが、動いている氷なのでクレバスと呼ばれる割れ目があります。
また、私たちが滞在する昭和基地は、南極大陸から少し離れた東オングル島にあり、南極大陸との間の海は凍っていて、ここにもクレバスがあります。観測場所や通り道には、たくさんのクレバスがあるので、落下防止や落ちた際には救助を行うこととなります。

▽南極あるある
市長：南極ならではの経験で楽しみにしていることは何ですか。
太田：外で水を撒くと、空中で真っ白に凍ってしまったり、熱々のカップラーメンが一瞬で凍ったりしてしまうので、皆一度はやってみるそうです。また、南極条約があり、南極の外には何も持ち出せませんが、唯一、氷だけは隊員がお土産として持ち帰ることができるので、楽しみです。

▽未来を担う子どもたちへ
太田：撮影機材を持っていくので、帰って来た時には、面白い動画や写真をいろいろ紹介できると思います。2026年の春頃に戻ってくる予定です。
市長：まずは無事に帰ってきてもらうことが一番ですが、戻ってこられたら、地元の子どもたちに現地での経験や感じたことを直接伝えてくださるとうれしく思います。頑張ってきてください。

◆南極地域観測隊・越冬隊とは
南極地域観測は、1957年に1次隊が昭和基地を設立してから現在に至るまでの60年以上にわたり、地球環境の観測を続けています。地球環境問題が深刻化する昨今、その活動の重要性はますます増しています。南極地域観測隊には、夏隊(4ヵ月)と越冬隊(1年4ヵ月)があります。
今回第66次隊に選出された太田さんは、2024年12月に日本を出発し、越冬隊員として1年超にわたり南極で任務にあたり、2026年3月に帰国予定です。
第66次南極地域観測隊：89人(夏隊58人、越冬隊31人)