市は、12月4日から10日までを「福岡市人権尊重週間」と定め、人権について考えるきっかけにしてもらおうと、市内で講演会をはじめ、さまざまな啓発活動を行っています。本紙では「障がい者の人権」について考えます。
来年4月に「改正障害者差別解消法」が施行され、障がい者への「合理的配慮」が、行政だけでなく事業者にも義務化されます。
■障がい者への「合理的配慮」が求められます
障がいがない人にとって何でもないものが、障がいのある人には、生活のしづらさや不安などを感じる原因(バリア)になることがあります。合理的配慮とは、障がいのある人の活動などを制限しているバリア(社会的障壁)を取り除くことです。
※社会的障壁とは、利用しにくい施設・設備、制度・障がい者の存在を意識していない慣習や文化・障がい者への偏見など、障がいのある人が日常生活や社会生活を送る上でバリアとなるもののこと。
事業者は、障がいのある人から社会の中にあるバリアを取り除くために何らかの対応を求める意思が伝えられた時、負担が重すぎない範囲で対応すること(合理的配慮)が求められます。ここでいう「障がいのある人」は、障害者手帳の有無にかかわらず、社会的障壁によって日常生活や社会生活に相当な制限を受けている人全てです。
■解決へと導くために
市は、市内在住の障がい者とその家族、および市内の事業者を対象とする専用の相談窓口「障がい者110番」を設置し、障がいを理由とする差別などの相談や、合理的配慮に関する問い合わせに無料で対応しています。
「障がい者110番」で障がいのある人と事業者との仲介役を担う、主任専任相談員の高次美佳さん(57)に聞きました。
障がいのある人は、「車椅子だから、できないだろうと初めから決めつけられた」「習い事の教室等に通おうとしたら断られた」など、障がいを理由とした差別に直面しています。また、障がい者が精神的なダメージを受けていても、事業者側は差別したとは全く思っていない、というケースもあります。
○大切なのは「障がいの特性を知ること」
障がいにはさまざまな特性があり、感じるバリアもそれぞれ異なります。「相手の立場で、うまくいく方法を考える」ことが大切です。
障がいのある人から相談を受けた場合は、障がいの特性などからどのようなバリアで困ったのかを聞き、事業者側の状況も確認しながら、お互いができる工夫について話し合います。
求められた対応が難しい場合でも、障がいのある人と事業者と一緒に違う方法がないかを考えます。このように、建設的な対話によって解決へと導くための調整・あっせんを行っています。
○私たちにできること
ある車椅子利用者が、「この路線はいつも混み合っているのに、自分のせいでますます渋滞してしまう」とバスに乗ることをためらっていました。すると、地域の皆さんが「乗り降りの手助けは運転士だけでなく、私たちにもできるのでは」と、一人二人と手伝い始め、地域ぐるみでサポートの輪が広がりました。本人も不安なくバスを利用できるようになったそうです。
また、聴覚障がいのある大学生に、周りの学生が「ノートなら自分たちに任せてよ」と、授業内容の書き写しをすることで、自然と交友関係が広がっていったという話も聞きました。
困っている人に気付いたら、「手伝いましょうか」「困ったことはありませんか」と尋ねてください。皆さんのちょっとした「気付き」が、障がいのある人もない人も、共に生き生きと暮らせるまちの実現につながっていきます。
障がい者の権利擁護・差別解消についての問い合わせは、障がい者支援課(【電話】092-711-4985【FAX】092-711-4818)へ。
◆「障害者差別解消法」とは
平成28年に施行された同法は、障がいのある人への差別をなくすことで、障がいの有無にかかわらず、互いに人格と個性を尊重し合いながら、共に生きる社会を実現することを目指しています。
行政機関および事業者による、障がいのある人への障がいを理由とした「不当な差別的扱い」は禁止されています。併せて、障がい者から申し出があった場合に可能な限り配慮すること(合理的配慮の提供)が求められています。
法改正により、来年4月には合理的配慮の提供が事業者にも義務化されます。
◆市障がい者110番
【電話】092-738-0010【FAX】092-791-7687
【メール】shougai110@c-fukushin.or.jp
場所:中央区荒戸三丁目 市民福祉プラザ(ふくふくプラザ)4階
開館時間:月~金曜日午前9時~午後5時(第2・4木曜日は正午~午後8時)
※祝休日、12月29日~1月3日は休み
◆事業者による合理的配慮の例
▽肢体不自由の人には
・階段や段差に簡易スロープを設置する
・飲食店等で車椅子のまま着席できるスペースを確保する
・歩く時に支える・扉の開閉を手伝う
・書類等を記入する際に自筆ができない人には代筆を認める など。
▽聴覚障がいのある人には
・病院や銀行などの窓口で呼び出す時には、音声が聞こえない人を座席まで直接呼びに行く
・状況に応じて紙や筆談ボード、タブレット等を使って内容を伝える など。
▽視覚障がいのある人には
・店舗内で、目の見えない人を商品のある場所まで案内する、欲しい商品を棚から持ってくる
・駐車場内の点字ブロックが他の客の自転車でふさがれていた場合には、自転車を移動させ、店舗まで店員が案内する など。
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