◆事業者の取り組み
障がいの特性は一人一人違います。障がいのある人が何に困っているのか、どのような助けを求めているかに気付き、配慮することが大切です。障がい者への合理的配慮に取り組む、市内の企業を紹介します。
▽公共交通事業者の取り組み「気付くことで誰もが利用しやすい駅に」
西日本鉄道(本社・博多区博多駅前三丁目)は、車椅子利用者や視覚障がい者が電車を乗り降りする場合などに、乗車駅と降車駅とで連絡を取り合いながら誘導等を行っています。
西鉄ステーションサービス福岡管理駅 指導駅務員・永江正慶さん(42)の話
障がいのある方を誘導する際に心掛けているのは、まず自分の名前を名乗り、「今から私がお手伝いをします」と声掛けをして、相手に安心してもらうことです。あいまいな表現は避け、「3歩先に階段があります」など、具体的な説明をするようにしています。
-「気付き」が大切
西鉄では、障がいのある方や高齢の方がどんな場面に不安を感じているのかを知るために、職員が駅構内などを歩いて疑似体験する研修を行っています。
私が勤務する西鉄福岡(天神)駅は、1日平均で約11万人が乗降しています。障がいの有無にかかわらず、誰もが安心・安全で快適に過ごせるよう、一人一人に合わせた配慮を心掛けています。
-相手を思いやる気持ち
最近はスマートフォンを見ながら歩いている人も多く、私が障がいのある方を誘導している時にぶつかってきたことも一度や二度ではありません。大きな事故につながる恐れもありますので、「歩きスマホ」は絶対にやめてください。
障がいのある方や歩行が困難な方、高齢の方などに席を譲ることも、配慮の一つです。周囲を見渡す、通路をふさがない、点字ブロックを意識するなど、利用する皆さんのちょっとした気付きや、相手を思いやる気持ちで、さらに利用しやすい駅になるのではと思います。
▽就労支援事業者の取り組み「障がい者がもっと活躍できる社会を」
株式会社カムラック(博多区千代四丁目)は、ITに特化した障がい者の就労支援を行っています。
同社代表取締役の賀村 研さん(51)の話
妻の地元である福岡に移り住み、ベンチャー企業を立ち上げました。お金を稼ぐことよりも、地域に還元でき、多くの人の役に立てる企業にしたい、という思いで今の事業を始めました。
-一人一人の意識が変われば
環境さえ整えば、知識や経験を生かして成果を出せる人はたくさんいます。十分な技術を持っているのに、いざ就職したら単純な作業しか与えられないケースもあります。勝手な決めつけで、配慮し過ぎることも問題なのかもしれません。
企業も「雇用する義務があるから」ではなく、障がい者を戦力として迎えるよう変わっていかなければなりません。日本の企業の99%が中小企業です。経営者一人一人の意識が変われば、国内に1千万人以上いるといわれる障がい者の就労には、まだまだ「伸びしろ」があります。
-自らの力で
カムラックの事業所には、週30時間以上働いて健常者と同等の収入を得る人もいます。それは、質の高い仕事をして、きちんと評価されているからです。
さらに、ここで事務系のスキルやシステム開発などの実績・経験を積んだ人を就職へと導いたり、企業に活躍できる人材として送り出したりしています。多くの地元企業も賛同してくれ、4月以降8人が企業に採用されました。
採用はゴールではなく、ここからが彼らのスタートです。障がい者が活躍できる社会のために、これからも支援を続けます。
○カムラックで働く永田さん(42)の話
企業から依頼される請求書チェックなどのパソコン業務に、今年2月から従事しています。ここでは、時間調整や体調面にも配慮してもらいながら、自信を持って仕事ができています。資格を取れるよう頑張って、次のステップを目指します。
人権特集に関する問い合わせは、市人権啓発センター(【電話】092-717-1237【FAX】092-724-5162)へ。
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