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みんなで人権(じんけん)を考える「つなぐ」TUNAGU II

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福岡県筑紫野市

■「TUNAGU II」とは
人と人、心と心をつなぐ、世界とつなぐ―人権尊重のまちづくりの一環として、さまざまな人権問題について市民の皆さんと共に考えます。

■人(ひと)の世(よ)に熱(ねつ)あれ 人間(にんげん)に光(ひかり)あれ
そのだ ひさこ
昨年は全国水平社が結成されて100年、今年が九州水平社が結成されて100年にあたる。部落差別を廃止する、いわゆる解放令が出されたのは1871(明治4)年、全国水平社が結成されたのは51年後の1922年である。解放令の本文は1行と4文字ほど。出されても、「むら」(被差別部落)の生活は今まで強制されていた仕事まで奪われ、少しも楽にはならなかった。新しい差別語までうまれ、学校のなかででも差別される過酷な日々がつづいた。部落差別をなくす教育など何にもない時代のことである。部落問題の教科書記載は、なんと解放令から101年後の1972年なのだから。約百年遅れで、部落差別をなくす同和教育がやっと始まったのである。
大正時代、ついに差別に負けない水平社結成を呼びかける言葉「起きてみろ 夜明けだ!」、「芽から花をだし、大地から日輪を出す歓喜よ」などの叫びが湧きだしてきた。そのパンフレットの表紙には「水平」という文字がフランス語で書かれている。そして、創立大会当日、人権宣言として世界的にも知られているあの水平社宣言が読み上げられた。
人はどんなにいたぶられ、虐げられても、体内深くに自ら立ちあがる力を秘めていると水平社宣言を読むたびに、私は深く思い知らされてきた。一番好きな文言は、「そうして人の世の冷たさが、どんなに冷たいか。人間をいたわることが何であるかをよく知っている吾々は、心から人生の熱と光を願求礼賛(がんぐらいさん)するものである」という一文である。心がジーンと引きしまり、ホカホカとぬくもってくる。そして有名な「水平社はかくして生まれた。人の世に熱あれ、人間に光あれ。」と結ばれている。
実は水平社宣言は全部で12存在する。部落民としての誇りと人間の尊厳が満ちている創立宣言が一つ、あと、第5回大会まで同じ宣言が使われている。第6回から第15回大会まで、毎回宣言は変った。最後の宣言が第16回大会の宣言である。この大会で水平社は自然消滅する。1942年、太平洋戦争突入の年、「言論、出版、集会、結社」などの臨時取締法によってである。
「学びをつなぐ講座」で学習している市民の皆さんといっしょに創立時の宣言と第16回大会の宣言を一行ずつ読んだ。国中で、戦争へと突入していくころの、もう引き返せない苦渋がにじみ出ている宣言だった。
だが、1946年、敗戦の翌年、水平社は部落解放全国委員会を結成して「踏みにじられた正義と自由と生活を奪い返そう」と、部落差別をなくす運動をすぐさま立ち上げた。その精神は、現在も脈々と受け継がれ今日に至っている。

■一番多く使われている言葉「人間」
小中学校の社会科の教科書にも、水平社創立のことが載っており、水平社宣言について子どもたちは学びます。水平社宣言には「差別」という言葉は、一つも使われていません。一番多くつかわれているのは「人間」という言葉で宣言文の中で10回使われており、人間を尊敬することによって差別のない社会をつくろうと謳(うた)われています。
宣言文の最後の「人の世に熱あれ、人間に光あれ」という文の中の熱や光が何を示すか、授業の中で子どもたちは自由に考えていきます。みなさんは、どのように考えられますでしょうか?

問合せ:教育政策課

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