■12月で3年間の任期を終え、地域おこし協力隊を卒業
令和4年1月に築上町の地域おこし協力隊として着任した加藤詩乃さん。加藤さんは「体験型地域おこし協力隊」として1年目は町のさまざまな地域づくり活動を体験取材し、その魅力を発信しました。2、3年目はまこちの里で働きながら、地域づくり活動の支援を行いました。今月で任期を終える加藤さんにインタビューします。
※地域おこし協力隊は、都市部から人材を受け入れ、「地域協力活動」に取り組んでもらいながら町の活性化を図る制度です。
◇活動を大きく分けると最初の1年間の体験取材と2年目以降のまこちの里での活動。1年目の体験取材の感想は?
毎日が、初めて出会う人、初めて体験することばかりの日々でした。スイートコーン畑で見た朝日や、船に乗せてもらったイカ漁。その時の感動が脳裏に焼き付いて、一生忘れられない思い出がたくさんできました。ただ、大変だった思い出もあって、元々20程度の体験予定でしたが最終的に40以上を体験しました。体験して、取材して、記録して、SNSで発信して、印刷物にまとめて……という流れがとても大変でした(笑)体験は楽しかったのですが、きちんと発信していくことの大変さを学んだ一年でもありました。けれど、発信をしなければ、町内の地域活動が埋もれたままになってしまうし、実際、私たちの発信で活動を知ったという声をもらえて、あのとき頑張ってよかったなと思っています。
◇2年目以降の活動の感想は?どうして活動先にまこちの里を選んだの?
町に来たばかりの頃、町内を回って一番惹かれたのが寒田地区でした。ビビッと来たというか(笑)それから、まこちの里に行ったとき、幼少期によく家族で行っていた、祖父の山小屋を思い出しました。そこは長野県の山奥だったのですが、寒田には通じるものがあって懐かしい気持ちになりました。そのあと、まこちの里で「おばあちゃんの寒田あられ」を商品化する際に、ラベルのデザインを考えさせてもらう機会がありました。まこちの里の方たちとデザインを一緒に作る中で、価値観や波長が合う感じがして、「一緒にいてすごく楽だな」と無意識に感じていたと思います。一緒にいてストレスがないというのは自分にとってかなり大事なポイントでした。
活動は、まこちの里のみなさんと「一緒にする」ことを意識していました。私はまちづくりの主体は地域に住まうみなさんだと考えています。協力隊は町を救うヒーローではなく、住民の方とは少し違う目線を持っている、ただそれだけの人です。でも、地域のみなさんがやりたいことをかなえるためには、全力でお手伝いしたい。そんな風に思っていました。その考えもまこちの里のみなさんと合っていたように思います。協力隊のことをよく理解してくれていて「詩乃さんがいなくなってできなくなることはしない」という考えが一貫していました。今自分たちが楽になるためではなく、どうしたら持続していけるのか未来のことを考えて、私に役割をくれました。まこちの里のみなさんと出会えたことが何より嬉しいし、ここで活動できてよかったと思います。
◇来る前にイメージしていた活動ができた?
イメージ以上に楽しく充実した3年間を過ごせました。私は地域の方と密接に関わって、地域の方の声を生で聞ける地域づくりがしたくて築上町に来たので、本当に幸せな3年間でした。
◇3年間で加藤さん自身の変化は?
たくさんありますが、まず、自分の考えを言葉にすることが上達したと思います。
協力隊になって、自分自身のことを聞かれる機会が増えました。自分はどう思っているのか考える機会も増えましたし、それをどう言葉にしたら正しく伝わるか、たくさん練習させてもらったと思います。人前で話すことが得意ではなかったのですが、だいぶ緊張せず話せるようになりました。
それから、最近思うのは、本来の自分を築上町に来て取り戻したかなと。私は今までに2つの会社を経験していて、1つ目の会社で人間関係が上手くいかず病んだことがありました。町に来てから、みんな優しくて、たくさん可愛がっていただいて、人と関わることが怖くなくなったし、むしろ好きになりました。病む前の自分はそうだったなと思い出しました。本当に人に恵まれていて、今すごく自分らしく生きられていると感じています。
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