◆(有)みつぎ
駅前通りで化粧品店を営む有限会社みつぎ。昭和28年(1953年)4月に設立され、71年になります。現在、4代目の山口英子(えいこ)さんが代表を務めています。創業者である英子さんの曾祖父の代では、小物や雑貨を取り扱う商店で、化粧品を取り扱い始めたのは祖父母の代からだそうです。戦前から化粧品を取り扱っているお店は市内では大変珍しく、行橋の化粧品業界を牽引する先駆者とも言えます。1960年代からは化粧品専門店へシフト。戦後のこれから明るい社会を願う女性たちに、元気を与えていたと言います。
現在は娘の一枝さんと経営をされていますが、一枝さんは市内でいち早く化粧品を取り扱い始めた先祖についてこう話しました。「大きなチャレンジだったと思いますが、特に祖母の先見の明にはとても尊敬します。近隣で取り扱いのないALBION(アルビオン)化粧品を株式会社アルビオン創立当初から取り扱いをしていました。現在でも主力の商品です。」
駅前通りの路面店のほか、丸和サンパル、ルミエール椎田店に出店し、女性を中心に地域の美に関わってきました。現在は、本店とゆめタウン行橋店の2店で営業を行っています。「ゆめタウンへの出店は新たな挑戦であり、不安もありました。」と英子さんは出店当時を回想しました。「化粧品の種類が昔と違い本当に多く、ドラッグストアやコンビニ、100円均一でも気軽に、そして手ごろに購入できる時代。路面店では高齢化も進み、新規のお客様は少ない状況です。そのような中、新たな出店は大変勇気が必要でした。」ゆめタウン行橋への出店は、山口さん親子にとって新たな挑戦でしたが、店とは異なる年齢層をターゲットに賑わいを見せています。「今後、もっとゆめタウン行橋店を強化していきたいと思っています。店内のお手洗いに取り扱っている商品のハンドソープを設置してもらい、当店を知らないお客様にも試してもらえる環境を作っています。地道ではありますが、まずは認知してもらえるところから努力していきたいです。」とゆめタウン行橋店を中心で担っている一枝さん。続けて、「本店では80代や90代のお客様もいらっしゃいます。お年を召しても化粧品を使って綺麗でいようという気持ちが素晴らしいと思います。また、当店を愛用してくださることに感謝し、配達も積極的に行っています。」と英子さん。最近では、Instagram等で人気の化粧品を求めて、若い世代の方々がスマートフォン片手に来客してくれるそうです。「駐車場が少ない路面店での営業は厳しいことも多いですが、若い方がスマートフォンを片手に憧れの化粧品を買いにわざわざ来店下さるのはとても嬉しく、元気をもらえます。この場所で育ち、先祖たちが守り続けたこのお店をこれからもこの地で続けていきたいです。」と英子さんは今後についてもお話ししてくれました。
みつぎでは、老人クラブのイベントでお化粧講座を開催するなど、地域貢献を行っています。南公民館で開催した際は30人程集まり、たくさんの笑顔で包まれたそうです。引き続き、地域の方々の笑顔のためにこのような催しを続けていくとのことで、今後の活動にも期待しています。
今回のクローズアップでは、70年の時を行橋と共に歩んできた企業を特集しましたが、どの企業も根底に「行橋への愛」がありました。70年もの間、同じ地で生業(なりわい)を続けていくことは容易(たやす)いことではありません。何もしなくてもモノが売れる、土地が売れる、そんなバブル期もあれば、リーマンショックや近年のコロナ禍等、人が出歩かない、モノを買わない・・・そんな時代を全て乗り越えてきた70年。後継ぎだからという理由だけではなく、それぞれに行橋への愛や地域への想いがあり、思い描くこれからの行橋像があり、この地で生業を続けています。地域に根差した企業だからこそ出来る、きめ細やかなサービスや対応。何気ない会話やそこにしかない特別な空間が生まれるのは、地元企業だからこそではないでしょうか。
また、まちなかの当時の賑わいを知り、さらに今後また当時のような賑わいが戻ってきてほしいと願う気持ちから、それぞれに出来る地域貢献(お祭り、ソフトボール大会、公民館での出前講座)を実践されていることを知りました。
これまでの70年を共に歩み、そしてこれからも共に行橋を創り上げていく「協創」がここにあります。
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