◆Roaster’s labo 焙煎研究所 代表 植森俊行さん
金屋の住宅地に佇むコーヒースタンド。看板にはRoaster’s laboのロゴと「焙煎研究所」の文字。ここで珈琲豆の焙煎とコーヒーやスイーツの提供を行うのは、焙煎士の植森俊行さん(44歳)。
みやこ町出身の植森さん夫婦ですが、自宅の建設と妻、優子さんの美容室開業を機に、行橋への移住を決めたそうです。その頃の植森さんは会社員。工事現場の看板やさるガードで有名な株式会社仙台銘板で、商品管理の業務を行っていました。全国に営業所があるため、単身赴任は必須。まだ幼い子どもたちとの時間を大切にしたいと思いながらも、家を建て、妻の優子さんは起業したばかりで、植森さんは安定した会社員として働く必要があったと言います。
契機はコロナ禍。当時、新宮町に5年間単身赴任をしていたそうですが、行橋の自宅に帰宅できるのは週末のみ。行動制限、先が見えない新たなウイルスの脅威に、「この貴重な週末の帰省は愚か、他県への転勤が決まれば家族と自由に会えなくなってしまう・・・。」という不安が募りました。ステイホームが叫ばれる中、単身赴任先のマンスリーマンションの一室での楽しみは、フライパンで珈琲豆を煎ることでした。ひとりで子育てをしながら美容室経営に励む優子さんに、何か自分ができることはないか・・・。その頃から、優子さんの美容室「union」で、カラーやパーマの待ち時間に自分の焙煎したコーヒーで、味覚を含む五感をお客様に満たしてもらいたいと考えるようになったそうです。
植森さんはこれまでの人生をこう振り返りました。「これまで、これがやりたい!というような強い意思がなかった。みんなが就職するように、自分も当たり前のように就職した。仕事も指示通りにこなしていた」。そして、さらにこう続けました。「今は、自分の意思を持って働いている。完全独学の珈琲焙煎。豆や気候に合わせながら何千通りもの焙煎を試し、データ管理をしている。また、この豆をどう届けるかマーケティングも学んだ。やっと自分の人生を生きている感覚」。
家族との時間を大切にし、自分が好きな事を仕事にした今、まずはやってみることが大切だと実感しているそうです。人は、年を重ねれば重ねるほど、慎重になってしまいます。何か始めたいという気持ちが少しでもあれば、自信がなくてもチャレンジしてみて欲しいとアドバイスもいただきました。
植森さんは今後の展望について、「博多と言えば明太子、中津と言えば唐揚げ!とみんながすぐに連想するように、『行橋と言えばコーヒー』をめざしたい。文化を作ることは大変だが、作っていかないと生まれない。」と熱い想いをお話ししてくれました。
今回のクローズアップでは、「好きを仕事に」することで活躍する方々を特集しました。自分の気持ちに正直に、何が一番大切かを考え行動に移すことで、働き方が変わり、笑顔が増える姿が見られました。自分が笑顔になれば、その輪は広がっていきます。家族のみならず、社会全体にも活力が生まれます。
好きなことと言われても、はっきり「これ」と答えることができない人も多いのではないでしょうか。無理に好きなことを見つけたり、仕事にしたりすべきというものではありません。好きだという気持ちを大切にし、我慢したり諦めたりせず前に進んでほしいと思っています。そして、好きなことを仕事にするのか、趣味や息抜きとして大切な時間にするのか、それぞれのライフスタイルや価値観や環境の中で選択してほしいと思います。
年齢や環境は関係ありません。人生は一度きりです。仕事に限らず、何かやってみたいことがあるのになかなかチャレンジできなかった方は、まずやってみる、行動に移すことから始めてみませんか。
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