■特集気配り・心配りの延長線誰もが暮らしやすい社会へ 12月3日~9日障がい者週間/12月4日~10日人権週間
障がいのある人が直面しているさまざまな問題を知っていますか?
誰もが暮らしやすい社会にするためにはどのような取り組みをしたらいいのかなど、12月10日の人権週間講演会の講師であり、先天性多発性関節拘縮症を患う山崎海斗さんにお話を聞きました。
▽Profile 山崎 海斗(やまさき かいと)さん
難病の先天性多発性関節拘縮症で生まれ、これまでに12回の手術とリハビリを経験し、高校卒業後はあこがれの営業マンに。現在は営業マンに加え、県内の小・中学校、高校などで講演活動を行いながら、パラバドミントン選手としてパラリンピック出場を目指している。
▽先天性多発性関節拘縮症とはどんな病気ですか?
生まれる前から多くの関節が固まる病気で、僕は生まれつき肘や手首、膝、足首、背骨など多くの関節が曲がった状態で生まれてきました。現在の身長は139cmです。
重たい荷物を持つことが難しく、今でも月に1回のリハビリをしています。
▽障がいがあることで困っていることはありますか?
この体で生きてきたことが当たり前で、道具とか何かしら工夫すれば、何でもできるようになったのであまり困ってないかもしれません。
強いて言えば、僕は車を運転するんですが、駐車場の出口にある精算機が遠いことがあります。手も短いので、駐車券がなかなか届かない。それで、毎回車を降りて、駐車券を入れてお金を払わないといけません。
だから、カメラ付きの自動で開く駐車場がもっと増えたらいいなと思います。
あとは自動販売機。僕は営業マンなので、いろんなところを回っているときに、自動販売機でお茶とかお水を買いたいなと思っても、大体一番上の段にあるんですよね。届かなくて買えないので、下にボタンがついている自動販売機が増えたらいいなとも思います。
▽講演活動を始めるきっかけは何だったのですか?
中学生時代には学校内でいじめを受けたり、障がいがあることで差別的な目で見られたり、嫌なことを言われたりして生きてきました。
大人になって、障がいというものを前向きに考えられるようになった今だからこそ、子どもたちに障がいとか、人と違う見た目とか、人と違う考え方とか、いろんな人がいて、それが当たり前の世の中だっていうのを伝えていきたいという思いがあって、講演活動を始めました。
講演のタイトルにもなっているんですけど、「明るく楽しくポジティブに」という自分のモットーを広めていきたいなという思いが一番です。
また、僕のことを知って、先天性多発性関節拘縮症のことを知ってほしいし、分からないことがあったらどんどん聞いてほしいです。
▽山崎さんの強みとは何ですか?
小さい頃から、自分が他の人と同じようにはできないけど、そのできないことをできるようにするにはどうしたらいいか、どういうふうに工夫すれば自分なりにできるようになるかっていうのをひたすら考えてきました。
だからこそ、何か難しいことが目の前に立ちふさがったときの「考える力」「工夫する力」は人よりあるんじゃないのかなと思います。
▽事業者の合理的配慮も法的に義務化されたことによって、変わったなと感じることはありますか?
全くないです(笑)。合理的配慮は気配りや心配りの延長線上のものだと捉えているので、義務化されても、その気配り心配りの精神がないと、なかなか浸透していかないんだろうなっていうのがありますね。
合理的配慮って、障がい者の法律の話だとは思うんですけど、実際は障がい者であっても健常者であっても関係ないと思っています。
困っている人がいたら助ける、声をかける、それだけのことなんですよね。
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▽これまでにうれしかった気配りはありましたか?
ごく一般的だと思うんですけど、電車で立ってるときに席を譲っていただいたこと。
また、最近あったことではコンビニでの気配りです。
上の段の商品はどうしても届きません。そういうときにどうするのかというと、上の段にあるものは諦めます。
どれだけ欲しいものがあっても、店員さんも忙しそうだし、一般のお客さんに声をかけるのもやっぱり遠慮してしまいます。
でも、そんなときに店員さんから「何かあったら声をかけてくださいね」という一言をかけてもらったことで、頼みやすくなったので、すごくありがたかったです。
そういう優しい気配りをしていただける人がもっと増えたら、いろんな人が生きやすくなるんじゃないかなって思いますね。
▽人々の意識が変わった、社会が変わったと思うことはありますか?
「合理的配慮」や「インクルーシブ※」など、そういった言葉が出てきたことで少しずつ皆さんの意識の中に浸透してきているのかなっていうのは実感しています。
でも、僕が半袖半ズボンを着て、体の特徴が目立つ格好で外に出たときは大注目されますね。
また、オリンピックとパラリンピックではテレビで放送される時間にすごく差があったと思います。
あと、まだエレベーターがついてない学校もあり、障がいのある子どもが1階にある特別支援クラスにしか通えないということなどを踏まえると、変わっていないところはまだまだありますね。
▽山崎さんの夢は?
営業マンとしての夢は「日本一小さい、日本一の営業マン」になることです。
今後やっていきたいのは、講演活動を必要としていただけるところへ、全国どこでも行くこと。
また、障がいのある人とか、コンプレックスを抱えている人、いじめを受けている人で、つらい思いをして学校に行けなくなってしまった人たちが伸び伸びと学べるような学校を作ること。
すごく良い個性をたくさん持っているのにそれを発揮できない人ってたくさんいると思うんですよね。それって本当にもったいないことだと思うので、そういう一人一人の個性を大切にして伸ばしてあげるフリースクールみたいなものを作りたいですね。
▽遠賀町の皆さんへのメッセージをお願いします
講演会で、今までの自分の生い立ち、障がい者として生きてきた経験・生き方をお伝えして、皆さんの生活の中の一つの気づきになれば嬉しいです。
皆さんの人生がより明るく楽しくポジティブな気持ちになれるような講演会にしたいと思っているので、皆さんの参加をお待ちしています。
※インクルーシブ…障がいの有無、国籍、年齢などに関係なく認め合い共生すること
※「山崎」の「崎」は環境依存文字のため、置き換えています。正式表記は本紙をご覧ください。
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