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〔特集1〕「常磐もの」と「常磐者」(1)

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福島県いわき市

■宝の海を後世へ
いわきの海岸線は、いわき七浜と呼ばれ、全長60kmにも及ぶ美しい景観が続いています。
そのいわき沖は、千島海流の親潮と日本海流の黒潮が交わる「潮目の海」として豊かな漁場が形成されています。黒潮とともに北上してきたさまざまな魚が、親潮で発生した豊富なプランクトンを食べて繁殖するため、質の良い魚介類がたくさん取れる、まさに「宝の海」です。
この宝の海の恵みを受け、本市には北から久之浜、四倉、豊間、小名浜、小浜、勿来など多くの漁港が整備され、古くから栄えた水産業は港町の発展を支えてきました。
水産業の中でも、本市では沿岸漁業や沖合漁業が特に盛んです。漁法もさまざまで、大きな袋網で海底を引っ張り、海底近くにいる魚等を取る「底引き網漁」や、魚の群れをぐるりと網で囲み、網の底から絞り上げる「まき網漁」、漁師が海に潜り岩陰にいるアワビやウニを探して取る「潜水漁」など、あらゆる漁法を用い、多種多様な水産物を漁獲しています。
本特集では「宝の海」を後世へつなげるために奮闘する方々の姿と思いに触れ、いわきが誇る水産業と水産物の魅力についてお届けします。

■新たな時代に向けて
『常磐もの』とは、古くからの海の恵みを大切にし、食文化として育ててきた本市の水産物と水産関係者の総称です。
常磐ものをいかにして取り、価値を加え、皆さんの食卓へ新鮮な状態で届けるかは『常磐者』である水産関係者が担っています。
海に生きる人々は、自然と向き合いながら、その厳しさと美しさを日々感じ、先人たちが真摯に向き合ってきた宝の海を大切に守り、地域独自の伝統や文化を育んできました。
少子高齢化のこの時代、どの分野も担い手不足は深刻であり、これは水産業も同様です。
世界に誇るいわきの常磐ものを次世代へつなげるためには、若い世代の常磐者の存在が不可欠です。

■「常磐者」の現状
本市の漁業就業者は、2005年の819人から2020年には388人と大幅に減少しています。さらに、市内の水揚数量においても震災前(2010年)の約20,123トンに対し直近(2023年)では、約7,447トンまで減少しており、担い手不足による水揚数量への影響が深刻な状況となっています。世界に誇る常磐ものも漁業関係者がいなくなっては衰退の一途をたどるほかありません。この流れを打開すべく行政だけでなく、若い世代の漁業関係者も交えたさまざまな取り組みが行われています。

■先人たちの誇りを受け継ぎ、次世代へ
◇「常磐者」の挑戦
漁師は、季節によって取る魚の種類を決め、天候を見ながら船を出し、風や潮の流れを読みながら魚のいる位置を探り当てて網などを仕掛けます。天候や魚の習性を読み解きながらの漁は、魚たちとの頭脳戦です。自らの経験と知識、そして積み重ねてきた技術をもとに、新鮮な魚を取り、多くの食卓へ届けることで、魚食文化の発展と水産業の振興に大きく寄与しています。
一方で、昨今の漁業就労者は著しい減少傾向にあり、第一次産業である漁業の衰退は、漁獲量の減少だけでなく、水産加工や水産物流など関連する地域産業への直接的な影響のほか、私たち消費者に対しても大きな影響を及ぼします。
また、これまでの長い歴史で培われてきた伝統や技術など、地域に根付いていた漁業文化が失われてしまう懸念もあります。
こうした課題解決に向け、若手漁業就業者による担い手対策に向けた挑戦が始まっています。
また、小売業においても、歴史と伝統を受け継ぎ、そして地域の魚食文化を支えるため、新鮮な魚をよりおいしく提供するために尽力されている方々がいます。
こうした「常磐者」の方々のさまざまな挑戦によって、宝の海が守られ、「常磐もの」という誇り高きブランドを次世代へつないでいます。

◆漁師の誇りを次の世代へ
漁師 佐藤文紀さん
漁師の佐藤文紀さんは、祖父の代から漁師で、自身が3代目になります。大学2年生の時に東日本大震災を経験し、一度は別の仕事に就くも漁師になる夢を諦めきれず、東京電力福島第一原発事故後に続いていた本県沖のヒラメの出荷制限が解除された際に勤めていた会社を辞め、漁師の道に入りました。
「今は漁師になった喜びと誇りをかみしめながら、父の背中を日々追いかけています。とびきり良い魚が取れた時やお客さんから『おいしかったよ』と言ってもらえる時は喜びもひとしおです」とうれしそうに話してくれました。
また、若い世代が漁業に就く環境づくりにも力を入れており、自分にしかできないチャレンジをこれからもしていきたいと意気込みを語ってくれました。

◇30年後の漁業を考える「JFいわき市担い手対策プロジェクト」
後継者世代が現在抱えている悩みや不安を共有し合い、将来に向けて新たな挑戦をすることを通して、今後の経営計画や将来像を描きやすい状況をつくることを目指し、月に一度、若手漁業就業者(就業予定者)等で集まり、新漁法導入の検討をするなど、新たな挑戦が始まっています。

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