◆「常磐もの」に付加価値を
小売業者 松田幸子さん
鮮魚の小売業を営む松田幸子さんは、自身が3代目になります。19歳からお店に立ち、魚をさばいたり、干物を加工するなど、魚の個性を生かす技術を磨いてきました。冬のこの時期は水が冷たく大変ですが、お客さんの喜ぶ顔を思い浮かべながら日々仕事に没頭しているとのことです。
「特に干物が良く仕上がった時はうれしいです。自慢の常磐ものに付加価値を付けた感じです。早くお客さんに食べてほしいという気持ちになります」と悴(かじか)む手をさすりながらも満面の笑みで話してくれました。
「漁師さんが命懸けで取ってきた魚ですから、1匹たりとも無駄にはしたくありません」と話す表情からは、魚に対する強い愛情と常磐ものを扱う誇りが感じられました。
◇受け継がれる常磐者としての意思「魚の個性を生かす」
さんけい魚店は、創業40年、港町小名浜で長く住民の暮らしを支えてきた鮮魚店です。常磐ものを中心に新鮮な魚介類を販売しており、中でも1尾ずつ丁寧に干し上げた干物も自慢の一品。保存料などを使わず、旬の素材のおいしさをそのまま味わうことができます。
■県内唯一の専攻科
水産業における担い手づくりの一つに、小名浜海星高校の生徒さんがあげられます。
航海士や海技士の資格を学習する「海洋科」や、水産加工品の製造・販売等、食について実践的に学習する「食品システム科」など、専門的な学科が多岐にわたります。
また、県立高校としては、県内唯一となる5年間一貫教育の専攻科が設置され、専攻科修了生は日本全国の関連産業界で活躍しています。
専攻科は「海洋科」「無線通信科」「機関科」に分かれ、より高度な知識と技術を学ぶとともに、常磐者の卵として実践的な実習も行っています。
航海実習では、練習船「福島丸」に乗船し、およそ2カ月間で、9,000キロに上る実習を行っています。本年度2回目となる遠洋航海では、生徒39人が乗船し、日付変更線付近でマグロのはえ縄漁などを行いました。
水産業の即戦力・プロフェッショナルとして希望に溢れる新たな常磐者が生まれています。
■誇り高き、常磐もの
本市で水揚げされた新鮮な常磐ものは、震災前から築地市場などの水産関係者の間で高く評価されてきました。
市内の関係者も「常磐もの」という言葉に誇りを持ち、関係者が一体となって、消費者の認知度向上、消費拡大を進めています。
行政も連携し、常磐ものを給食で提供したり、出前講座の実施など、魚食への理解と普及推進を図る取り組みを進めています。
また、幅広く本市水産物の魅力に触れる機会を創出しながら、新たなファン層の獲得・拡大を図るため、豊洲市場内等でのPRイベントや都内レストランでの試食会なども積極的に実施しています。
これまで多くの「常磐者」が船や店の看板、そして宝の海を守り続け、築き上げてきた「常磐もの」。
この誇り高きブランドを次世代につないでいくためにも、地元消費者として私たち自身が魚食文化を推進し、その魅力を次世代へ伝えていくことが大切です。
◆未来を担う水産業の宝
小名浜海星高校の生徒さん
取材に伺った日は、水産物の加工実習が行われていました。この日調理していたのは「ギョロッケ」と呼ばれる魚のコロッケです。スケトウダラに野菜を入れたすり身を成形し、パン粉を付けてフライにしたものです。
授業を受ける生徒の眼差しは、まさに真剣そのもので、将来の水産業を支える志の高い生徒で溢れていました。本市が誇る常磐ものは、今後こうした若い世代の力でさらなる飛躍が期待されます。
◇私も皆さんのもとへ「新鮮な魚」を 吉田光さん
小名浜海星高校水産科(海洋工学科)卒業後、専攻科(機関科)へ進学。4月からは市内の水産会社への就職を予定。「幼い頃から海が大好きで、将来は水産業の仕事がしたいと考えていました。さまざまな漁を経験しながら、皆さんの食卓に新鮮な魚を並べるお手伝いをしていきたいです」と話してくれました。
■常磐ものIWAKI
ー毎月7日は「さかなの日」ー
本市では「魚食の推進に関する条例」に基づき、毎月7日を「魚食の日(さかなの日)」と定めており、「さかなの日」協力店では毎月7日に魚食の推進に関する取り組みやサービスを実施しています。
《イベント情報》
◇常磐もの応援キャンペーン
新鮮でおいしい県産の水産物や常磐ものなどが買える販売キャンペーンを開催します。(商品がなくなり次第終了)
※支払いは現金のみ、エコバックを持参してください
3月2日(日)7:00~8:00 卸売市場 水産棟
◇いわき七浜おさかなフェスティバル2025
市内水産業関係事業者が一体となり、常磐ものをはじめとする本市水産物や水産加工品のおいしさ等の魅力を伝え、消費拡大、販売促進を図るイベントなどを実施します。
3月9日(日)10:00~14:00 小名浜アクアマリンパーク
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