二本松ふるさと人物史No.28

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■“安積疎水(あさかそすい)”開拓の功労者　渡邊　閑哉(わたなべかんさい)(1798～1873)

寛政10年(1798年)、下長折村(現⼆本松市下長折)の名主渡邊章の第4子として誕生、名は朴、通称儀右衛⾨、60歳で隠居して閑哉と号しました。幼いころより学問を好み、経済に志し、国学を⼤屋士由に、儒学を渡邊竹窓(わたなべちくそう)に学び、算学も修めたといいます。
文化14年(1817年)、19歳で布沢村の名主となり、その後、天保14年(1843年)には下長折村、嘉永2年(1849年)には鈴石村の名主を歴任し、借財で疲弊した村の復興に尽⼒しました。のちに、⼆本松藩校「敬学館(けいがくかん)」の教授に推挙されましたが、「農⺠の自分が士族に教授するなど恐れ多い」として辞退したと伝えられます。

また、安積平野(あさかへいや)開墾に着眼し、その後の安積疏水(あさかそすい)開発の糸口を作ったといわれ、さらに、戊辰戦争により焼失した十文字岳温泉に代わり深堀に引き湯を設計し、岳温泉の復興に尽⼒するなど、明治6年(1873年)8月19日に病により没するまで、数々の偉業を成し遂げました。

その一⽅で、地⽅⺠の指導にもあたり、ジャガイモ栽培の奨励(閑哉芋(かんさいいも)(※))、護岸⽤の台明竹の増殖奨励(閑哉竹(かんさいたけ)(※))、養蚕製糸の奨励、農村子弟の教育奨励を⾏い、多くの⼈に慕われました。今でも下長折地区には、「閑哉の墓」をはじめ、「閑哉の井戸」、「閑哉翁頌徳碑」があり、周辺の河川には“閑哉竹(かんさいたけ)”、畑には“閑哉芋(かんさいいも)”が栽培されており、渡邊閑哉の足跡を辿ることができます。

※閑哉竹(かんさいたけ)…移川、⼩浜川が度々氾濫し⼤きな被害がでていたことから、九州から台明竹を取り寄せ、3年かけて土⼿に植栽し、洪水から住⺠を守ったことから、その竹を感謝をこめ「閑哉竹(かんさいたけ)」と呼ぶようになったといわれています。

※閑哉芋(かんさいいも)…天保の飢饉を経験した閑哉は、馬鈴薯の苗を作付し、飢餓に備えるとともに、その芋で酒を造らせるなど食料の備蓄を奨励したことから、この芋を「閑哉芋」と呼ぶようになったといわれています。