■幕末の山水画入門書
▽令和5年度第2回企画展 市柳熊坂家の至宝
12/25(月)まで
伊達市保原歴史文化資料館
伊達市保原歴史文化資料館では、令和5年度第2回企画展「市柳熊坂家の至宝」を開催中です。
今回は展示品の中から、熊坂適山(くまさかてきざん)が弟蘭斎(らんさい)と共に刊行した、山水画の入門書『適山画譜 附山水(ふさんすい) 全』を紹介します。
熊坂適山は、伊達郡市柳村(現在の伊達市保原町)生まれで、江戸後半から幕末の時代に活躍した、伊達市を代表する画人の一人です。適山は、はじめ梁川移封後の松前藩家老・画人の蠣崎波響(かきざきはきょう)に10年余り師事し、「波玉(はぎょく)」と号して山水を描いていました。文政4(1821)年の松前藩復領後は、浦上春琴(うらがみしゅんきん)や田能村竹田(たのむらちくでん)に就いて南画を学び、「適山」と号を改めました。
『適山画譜 附山水 全』は、画を種類別に分け、技法や画論を記載しています。通神堂蔵版で、序を嘉永7(1854)年に適山の編で、跋(ばつ)(あとがき)を嘉永6(1853)年に実弟で蘭学者である蘭斎が書いています。
本文中の挿図では、山石などの「皴(しゅん)」を描く画法を紹介しています。「皴」とは山や土坡(どは)(傾斜地や斜面)・岩石などのひだやしわを描き、立体感や量感を表現する東洋的陰影法のことです。中国では秦・漢時代の山岳図にその原始的な形態が見られます。非写実的・観念的な描き方で、山水画の発展と共にさまざまな皴法が現れ、それぞれに特定の名称がつけられるようになりました。本書では、皴法20点、山水徴(さんすいちょう)4点を掲載しています。
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