「プラス思考」
「4番サード長嶋 背番号3」。この場内アナウンスに日本中の野球ファンが沸き立ちます。無類の勝負強さで放つ豪快なホームラン。ヘルメットまで豪快に飛ばす三振。華麗なる捕球とスローイング。すべてが絵になる男“長嶋茂雄(ながしましげお)”。野球少年の憧れの的でした。私も物心ついたときから長嶋選手を見て育ちました。集まると始まるのはいつも野球。うまくなってサードをやりたくて家の壁にボールをぶつけては親父に怒られていました。
中学校で野球部に入部。3年生のときに憧れのサードを任され、天にも昇る気持ちでしたが苦難はすぐに訪れます。もともとコントロールが良くなかった私は、いざ試合本番になると“暴投”という言葉が頭をよぎり、“マイナス思考”で腕が縮こまり、結果、暴投を繰り返していました。少年時代の苦い思い出です。
さて、先日“プレーバック長嶋茂雄の世紀”というテレビ番組を見ました。そこで私が特に印象に残ったのがスポーツライター小林信也(こばやしのぶや)さんの話でした。「引退から10年近くたっていた長嶋さんと札幌の少年野球の練習会場に行ったときのこと。長嶋さんがサードの守備をし始め、現役時代さながら猛ダッシュしてボールを捕りすぐに投げる。でもすべてが暴投なんです。そのとき長嶋さんが言った言葉が、“暴投なんか気にするな、捕ったらすぐ投げろ!”。その迫力と格好良さに子どもたちは目を爛々と輝かせていました」。そういえば、私の中学時代のサードの守備も、余計なことを考えず“捕ってすぐ投げたとき”は実に正確な送球だったと覚えています。
最後にもう一つ長嶋監督の言葉。「俺たちに過去は必要じゃない、大切なのは今日から先をいかにやるかだ」。監督は20年前に脳梗塞を発症しましたが奇跡の回復をみせています。これからも元気で、当時の野球少年に“プラス思考”で希望の光を与え続けてほしいと思います。
須田 博行
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