『年取りのごちそう』
◆ごちそうはいつ食べる?
東北地方で暮らす私たちにとって、年末年始で一番豪華な食事は年取り(大みそかの夜)の食事ではないでしょうか。
実は、年取りにごちそうを食べる風習は全国共通ではありません。例えば、関東の都市部などでは、大みそかには普段と大きくは変わらない夕食をとり、深夜に年越しそばを食べて年を越します。
ではなぜ、東北では年取りのごちそうを食べるのでしょうか。答えは、東北に残る、伝統的な生活に根差した時間感覚にあります。
日本古来の生活感覚では日没が一日の境目と認識されていたようです。そのため、大みそかの夜は翌日の始め、つまり正月の始めと考えられていました。年取りのごちそうは、正月の始まりのごちそうでもあったのです。
ちなみに、日没を一日の境目にしていた文化は、世界中にありました。クリスマス・イブの夜が大切にされているのも同じような理由です。
◆ご馳走に何を食べる?
ところで、年取りのごちそうには、どんな料理を準備しますか。
『鹿島町史』(平成16年)には、「塩引き、鰈(かれい)の煮つけ、煮しめ、それにざがき(牡蠣(かき))の吸い物」とあり、特に塩引き(サケ)は「食わねぇと年とれねぇ」ものだったそうです。
日本の多くの地域に「年取り魚」(正月魚とも)といって、地域ごと、家ごとに決まった魚を食べる風習があります。全国の年取り魚を見ていくと、広い地域で食べられている魚と、狭い範囲で食べられている魚があります。前者には、東日本でのサケ(塩引き)、西日本でのイワシやブリが当てはまります。後者では、仙台のナメタガレイや米沢のコイ、秋田のハタハタなどが代表的です。
相双地方でも、サケは欠かせないものとされていますが、カレイ(イシガレイなど)の煮つけもよく食べられるメニューです。
地域や家庭に伝わるごちそうを食べて、おいしい年取りを過ごしましょう。
問合せ:市博物館
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