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国見の民話かるた

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福島県国見町

■第十回 坊主にされた人「毛をそって ぺろりとだます 古狐」
むかし、半田の近くでどぶ池に入って「ありがたい、ありがたい」と拝んでいる人がいました。通りかかった人が「あんた、そんなとこで何をしてるんだい」と声をかけると、その人はびっくりして目を覚まして、狐に化かされたことに気づいたそうです。
その人が話すには、町で用を済ませ歩いていると、目の前を狐がひょこひょこ歩いていた。「あの狐め、何をするつもりだ。化かされないように後をつけてやれ」と気づかれないように後をつけると、狐が突然ひっくり返って、女の人が子どもをおぶった姿に変身して、近くの家に入っていった。
驚いて後を追うと、その家の人たちが「娘が孫を連れて帰ってきた」と大喜びしていた。これはいけないと思い、今までのことを全部話すと、「せっかく里帰りしてきたのに、それを狐だなんて」と怒って本気にしない。そこで、「本当に狐ではないのか、生いぶしをしたら分かるのではないか」となったので、土間に松葉を運んで、火を付けた。大変な煙が出るから、狐は苦しんでしっぽを出して逃げるだろう、と待ちかまえていると一向に正体を現すどころか、娘と孫が煙に巻かれて死んでしまった。
さあ大変だ、確かに狐のはずが目の前で死なれてしまったと、青ざめてしまった。「狐だなんて嘘をついて、娘と孫が死んでしまった」と責められていると、お坊さまが通りかかって「二度と人前に出られぬよう、坊主にしてやる」と頭の毛を刈ってしまった。人を殺してしまったのに、命も取られず、お坊さまに助けていただいて。ありがたくて、一生懸命に念仏を唱えて拝んでいたのに「いつの間に狐に化かされていたのか。こんな汚いところにいたなんて」と悔しそうに話したそうです。
狐に化かされた話は、昔話のひとつとして子どもたちによく話されていたようです。

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